米原子力協会:「早ければ5年後に事故耐性燃料の実用化が可能」

2018年4月23日

 米国の原子力産業界がエネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)との協力により開発中の事故耐性燃料(ATF)について、米原子力エネルギー協会(NEI)は4月19日、早ければ5年後の2023年にも商業炉での利用が可能になるとの見通しを明らかにした。
 NRC委員に対して先週行われたATFに関するブリーフィングで、関係者全員がこのような認識で同意したと説明。米国では今年2月、サザン・ニュークリア社のハッチ原子力発電所(BWR、91.1万kW)で初めて、ATFの試験用集合体が装荷されており、関係者間の調整が順調に進展した賜物だと指摘した。ただし、このような革新的技術の商業化を加速するには、米国における研究開発と許認可の枠組を従来のプロセスから、同時並行型のアプローチにシフトさせる必要があると強調している。

 福島第一原子力発電所事故後、米国では軽水炉燃料の事故耐性強化が議論の的となり、議会はこの目的に資する燃料と被覆材の開発プログラムに、2012会計年度予算からDOEに予算措置を講じることを決定。2022年頃まで3段階で開発・実証戦略を進めることとなった。NEIによると原子力産業界では現在、フラマトム社、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社、ウェスチングハウス社、およびライトブリッジ社が、通常運転時と事故時両方の条件に耐え得る様々な燃料設計を積極的に開発中。目標としては、最初のATF実燃料を2020年代初頭か半ば頃に商業炉に装荷することを掲げている。

 NEIの認識では、ATFは既存の燃料よりも長時間、冷却材が失われた状況に耐えるとともに、原子力発電所の安全裕度を拡大させる可能性を持つ。また、長期間の利用が可能な燃料であれば既存炉の実績向上に役立つほか、先進的原子炉用としても認可される道が拓けるとした。
 12日に開催されたNRC委員へのブリーフィングでも、サザン・ニュークリア社のD.ボスト上級副社長がATFのこのような潜在的利点に対する期待を表明。いつか安全上の利点が適切に定量化されるようになれば、規制要件の簡素化や要件の遵守にともなうコストの縮減につながると述べた。

 同氏によると、産業界は新しい燃料を2023年から2026年までに大規模配備する緊急性を感じており、理由として半数以上の既存軽水炉で2030年代半ばまでに運転期間が満了する事実に触れた。2020年代半ばまでにATFが利用可能になれば、事業者は2回目の運転期間延長を申請し、合計80年間稼働させるなかでATFの経済的恩恵を享受することができる。この時間枠は産業界にとって非常に重要であり、これほど短期間にATFを市場に送り出すには、NRCが技術の認証と許認可で手法の転換を図る必要があると同氏は指摘した。

 この関連で米電力研究所(EPRI)のN.ウィルムシャースト原子力担当副理事長は、認証と許認可を加速するために、ステークホルダーのコミュニティ全体が一致団結して協力する必要性を強調した。また、新技術の認証で使われてきた伝統的なプロセスのいくつかは、並行的に進めることができるとした。

 NEIによると、試験プログラムで得られたデータは歴史的に、コンピューターのモデリングやシミュレーション・コードの開発に利用され、これに基づいて更なる試験や確認作業が行われてきた。幸いなことにATF関連では、DOEの優れた予測モデリングやシミュレーションの技術が存在するため、データ評価とモデリング開発はベンチマークの確認試験と並行して進められる。このためNEIは今年2月、NRCが作成したATF許認可プロジェクトの計画案について、この並行的アプローチの採用を提案。燃料の許認可アプローチでは、一層の転換が必要だと訴えたほか、独自のシミュレーション・コードを開発するよりも、DOEが有する先進的モデリングとシミュレーション能力を活用すべきだと促した。

 NEIの感触では、NRCスタッフは同ブリーフィングにおいてこの提案を受け入れている。一方で、並行的アプローチを実行するには、産業界の関係者とDOE間で一層頻繁かつ徹底した意思疎通が必要であることも認識したようだと指摘。その例としてNRCのあるスタッフが、「意思の疎通を拡大したり、活動を並行的に進めるために意見を調整する」と述べた点に触れた。
 また、2018会計年度予算で議会はATF関係予算として8,500万ドルを承認しており、これは議会がATFプログラムを超党派で支持していることを明確に表しているとNEIは強調。2023年までにATF実燃料を装荷するという産業界の目標について、別のNRCスタッフが「日程を加速すれば実行可能」と発言した事実に言及している。