米エネ規制委、送電網の回復力保全で追加措置の必要性 検討
米国内の基幹電力系統が一時的な機能停止から回復する力(レジリエンス)について、連邦エネルギー規制委員会(FERC)はこれを維持・強化するための追加措置の必要性を、5月以降、早急に判断するとの考えを明らかにした。
4月17日に下院エネルギー・商業委員会が開催したエネルギー小委員会の聴聞会で、FERCのK.マッキンタイヤ委員長が発言したもので、米原子力産業界は、FERCがレジリエンス強化に資する電源に対して補償を与える方策を卸電力市場において模索していると理解。市場構造が直ちに改革されるわけではないにせよ、何らかの措置が原子力に対して取られる可能性に期待が高まっている。
米国ではエネルギー省(DOE)のR.ペリー長官が昨年9月、自然災害等で燃料供給が途絶した場合でも原子力や石炭火力は発電可能であり、レジリエンスの維持に貢献すると明言。これらの発電所が早期閉鎖に追い込まれないよう支援するため、コストの全面的回収を規定する提案をFERCに伝えるとともに、そのための規則制定に向けた措置を取るよう指示した。しかし、FERCは今年1月、提案された規則には連邦動力法(FPA)に基づく確固たる根拠が含まれていないとして、同規則の制定手続を打ち切る判断を下していた。
FERCは、送電や州境の卸電力取引、基幹電力系統の信頼性確保等に規制権限を有する独立の規制機関だが、昨年2月から8月まで委員の定足数5名が満たされておらず、マッキンタイヤ委員長も同年12月に委員長職に就いたばかり。このため、聴聞会ではFERCにおける現在の優先事項、およびFERCが権限を有する法令について審査が行われた。
証言の中で同委員長はまず、FERCが最も優先している事項は基幹電力系統のレジリエンス維持と強化だと言明。理由として、適正価格で信頼性のある電力供給が米国の国家経済と安全保障にとって重要な要素である点を挙げた。続いて、米国内の伝統的な電気事業者がこれまで、発送配電一貫運営の垂直統合形態を取っていたのに対し、1990年代以降、州政府と連邦政府両レベルの規制により卸電力市場の自由化が進み、独立系統運用者(ISO)や広域系統運用機関(RTO)が送電設備と市場を制御するようになった経緯を述べた。
このような競争市場環境では、採算の取れなくなった事業者が発電施設を閉鎖する事態にもなっているが、FERCとしては今後も既存の規則を評価し続け、様々な指令を通じて市場価格を公正かつ合理的に保ち、過度に差別的あるいは優遇的にならぬことを保証していくと委員長は発言。こうしたアプローチに基づいて、ペリー長官の提案手続を打ち切ったと説明した。
これに代わるものとして、FERCではRTOとISOの管轄区域における基幹電力系統のレジリエンス評価で新たな手続を開始。具体的な目標は、(1)レジリエンスの意味するところと要求するものについて、FERCと産業界が共通認識を醸成する、(2)RTOらが各管轄区域でレジリエンスをどのように評価しているか理解する、(3)これらの情報を活用してFERCがレジリエンスに関して追加措置を取ることが適切かを判断する――である。
RTOらは3月9日、FERCの指示に従ってこの問題に関する情報を提出しており、FERCはこれに対するコメントを、その他の関係機関から5月9日まで募集中である。FERCがこれらの情報やコメントを審査するに当たっては、基幹電力系統の信頼性とレジリエンスの維持で必要ならば、FERCは電力市場や送電関係の規則、信頼性の基準を進化させるべきだとの認識を持ち続けると強調。また、この概念に関しては、配電系統の信頼性や最新化など、FERCの権限を越える問題と必然的に関わらざるを得ないと付言している。