米仏が先進的ナトリウム冷却高速炉の研究開発協力を強化
米エネルギー省(DOE)と仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)は4月26日、先進的なナトリウム冷却高速炉(SFR)分野におけるこれまでの協力を強化するとともに、人工知能分野で新たな協力を開始するため、趣旨書(SOI)を交わしたと発表した。SFR関係では、協力範囲をモデリングやシミュレーション、技術試験の検証、双方のサプライ・チェーンと試験施設および先端材料の活用――などに拡大する道を拓くことになる。これにより、民生用原子力と高性能コンピューターに関するDOEとCEAの長年の研究開発協力が、新たな幕開けを迎えることになるとしている。
SOIに署名したDOEのR.ペリー長官は、「(今回の合意により)米仏両国がともに、原子力を安全・確実かつ価格も適正なクリーン・エネルギー源として推進する考えであることが明確に示された」と指摘。この日に就任したばかりのF.ジャックCEA長官は、「これら2分野における連携は米仏両国に利益をもたらすことになり、DOEとCEA双方が使命を果たす一助になると確信する」と述べた。
米国ではかつて複数の高速実験炉が建設され、連邦政府は1980年代に、一体型の金属燃料高速炉(IFR)と乾式再処理および燃料製造を組み合わせるシステムの計画を推進していた。DOEのアルゴンヌ国立研究所は出力2万kWの液体金属冷却炉「実験増殖炉II(EBR-II)」を、同計画や増殖炉関係の研究用として1994年まで約30年間運転。高速炉の基盤技術に関して、様々な実験データや設計と運転関係の経験を蓄積した。
EBR-IIの運転経験は、GE日立ニュークリア・エナジー社が開発中のナトリウム冷却・小型モジュール高速炉「PRISM」に活かされており、同社は昨年6月、「PRISM」の将来的な商業化に向けた許認可取得協力で、原子力発電事業者を含む4社とチーム結成協定を締結。同設計はまた、英国政府が余剰プルトニウムをリサイクルする場合の利用選択肢の1つとなっているため、英原子力デコミッショニング機構(NDA)がその可能性を検討している。
一方、CEAは1950年代に高速炉開発に着手しており、原型炉「フェニックス」、実証炉「スーパーフェニックス」へと歩を進めた。「スーパーフェニックス」は冷却材漏れや発電機故障が頻発したため1998年に閉鎖されたが、CEAは将来に備えた高速中性子炉として、現在は主にナトリウム冷却炉について開発を進めている。
2010年に開発プロジェクトを開始した出力60万kWの第4世代設計「ASTRID」は、「スーパーフェニックス」の経験に基づくSFR実証炉になる予定で、長寿命核種の分離・変換など放射性廃棄物対策に活用する計画。2014年からは日本原子力研究開発機構や三菱重工業も、設計・研究開発までの限定でプロジェクトに協力中で、2015年後半に概念設計段階が完了した。2016年初頭からは、基本設計段階に移行している。