米エネ省、先進的原子力技術開発支援に6千万ドル 投資

2018年5月2日

 米エネルギー省(DOE)は4月27日、先進的原子力技術の研究開発を官民のコスト分担で進める新しいイニシアチブの対象プロジェクトとして13件を選定し、総計6,000万ドルを投資することになったと発表した。
 革新的な原子力技術の開発を成功させる上で必要な専門的知見を、DOEと原子力産業界が連携して共有することは、非常に重要であるとの認識に基づくもの。ニュースケール社が進める小型モジュール炉(SMR)開発も含め、選定されたプロジェクトの産業界側は連邦政府機関や官民の研究所、高等教育機関などが参加するチームを主導し、米国における商業用原子力技術の水準を向上させていくことになる。今後5年間に同様の申請審査と選定を四半期毎に実施する計画で、DOEは2018会計年度における残り2回の選定で、さらに最大4,000万ドルの財政支援を革新的な提案に対して行うとしている。

 DOEのR.ペリー長官は、「先進的原子力発電技術の初期段階における投資の促進は、国内の原子力産業界が将来的にも盤石であり続けるよう支援することを意味する」とコメント。米国で原子力を復活・再活性化するための重要なステップであり、クリーンで信頼性が高く、回復力も強い電源の恩恵を米国民が継続的に享受することにつながるとした。また、既存の原子炉や新型原子炉開発の支援を通じて、米国の経済とエネルギー自立を支えるための、安全で一層効率的なベースロード電源の素地が形作られると述べた。

 今回のイニシアチブでは、対象に選定されたプロジェクト13件のうち8件が「財政支援条件の告示(FOA)」を受けた。FOAで支援を受ける際の条件は3種類設定されている。1つ目は新型原子炉設計の初号機開発を目指した大規模な実証準備プロジェクトであること、あるいは技術面と許認可面でリスクをともなうものの2020年代後半に実用化の可能性がある既存炉用技術の開発が対象。2016年末に自社製SMRの設計認証(DC)審査を原子力規制委員会(NRC)に申請したニュースケール社は、初号機の商業運転を2026年に実現するため、最終設計の確定やサプライ・チェーンの確保について、プロジェクト経費の半額である4,000万ドルをDOEから受け取る。また、X-エナジー社は、自社製の小型ペブルベッド式高温ガス炉に使用する3重被覆層・燃料粒子「TRISO」の製造施設設計と認可申請のために、やはり半額の約450万ドルを受領するとしている。

 2つ目の支援条件では、新型原子炉の設計や技術を商業化したり、最良のものに改良する可能性のある様々な概念やアイデアが対象となる。この条件で選定された4件には、ゼネラル・アトミクス(GA)社の新型燃料商業化プロジェクトや、エリジウム・インダストリーズ・USA社が進めている溶融塩炉用・流体力学モデルの開発・合理化プロジェクトなどが挙げられる。また、3つ目の支援条件は、新型原子炉設計の認証や認可取得などにおける、規制関係の課題や審査について直接、解決策や支援金を提供する内容。これには、GA社が開発している長寿命ガス冷却高速炉用ウラン・カーバイド燃料の認可申請前審査プロジェクトなど、2件が含まれている。

 対象プロジェクト13件のうち、残り5件は先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の対象企業5社に対し、合計177万ドル相当の技術開発バウチャー(国立研究所等の施設・サービス利用権)を交付するというもの。この中の1社であるテレストリアル・エナジー社は先月、独自に開発している一体型溶融塩炉の商業化促進のため、建設候補地の1つであるアイダホ国立研究所でサイト評価を実施するチームをワシントン州の非営利電気事業者共同機関と結成している。