IAEAがSMR技術作業部会の初会合 開催
国際原子力機関(IAEA)は5月2日、小型モジュール炉(SMR)など中小型原子炉の開発に関する新しい技術作業部会(WG)の第1回会合を、4月23日から26日までウィーンで開催したと発表した(=写真)。革新的な安全性能を有する先進的なSMRが、2020年代前半にも世界市場に出回り始めるとIAEAは予測しており、SMR技術を開発中あるいは開発検討中の加盟国に対して適切な支援プログラムを提供するための、IAEAへの提案事項をまとめるのが主な目的。SMRのユーザー国向け一般要件の最初の案文作成を目指して、年内にもコンサルティング会合を開催することを提案事項に含めたとしている。
IAEAによると、世界では現在、50ものSMR設計概念が様々な段階で開発中で、SMRへの関心は高まりつつある。その利点としては、化石燃料発電所の低炭素な代替オプションになり得るなど、幅広いユーザーのニーズに応えられる可能性があると指摘。また、安全性が改善されるという特長に加えて、熱供給や海水脱塩といった発電以外の分野への利用にも適していること、工場で組み立てたSMRを需要のある場所に輸送・設置し、単機あるいは複数モジュールで建設することも可能であることなどを挙げた。
このようなSMRの商業化に先立ち、IAEAは加盟国の規制当局が適切に準備を行えるよう、SMRの安全・許認可要件に関する規制者向けワークショップをすでに2016年3月から開始。SMRの型式や大きさに応じた安全要件設定に関して、包括的な指導要綱も作成する計画である。
今回の技術WGの初会合には、14の加盟国と2つの国際機関から34名の専門家が出席した。座長を務めたM.リコッティ氏は、こうしたイニシアチブはSMR開発における過去10年間の努力が自然に進化したことを示していると述べた。関係する専門家のネットワークを世界レベルで構築したことにより、近い将来、SMRの建設準備を整える際にIAEAが取り組む課題について、ガイダンスを提示することができると同WGは指摘。初会合では具体的に、建設地におけるインフラ設備やサプライヤー能力の評価について議論したことを明らかにした。
同WGとしては、SMR関係の支援プログラムがその他のIAEAプログラムと相乗効果を生み出すことを狙っている。このため、現在進行中の2つの調整研究プロジェクト、すなわち新型受動的安全システムの信頼性に関するものと緊急時計画ゾーン(EPZ)の区分基準に関するものをサポートしていく方針である。
SMR開発が実際に直面する課題の中には、IAEAの安全基準に基づいた堅固な規制枠組および確固たるサプライ・チェーンの構築などが含まれるが、それでも商業炉の最初の一群は2025年から2030年までに実現すると同WGのH.スブキ科学事務官は予測。加盟国が抱えている課題と取り組み状況を正確に見極めた上で、SMR技術の開発と建設の両方をさらに促進していきたいとの抱負を表明した。