英原子力規制庁、新たな活動計画で独自の保障措置体制構築を優先

2018年5月14日

 英国の原子力規制庁(ONR)は5月1日、2018/2019年の活動計画を議会に提出し、英国独自の自立した核物質計量管理制度(SSAC)の開発など新たな保障措置体制の構築を、ONRが優先的に実施する10項目の1つに特定していることを明らかにした。
 英国は来年3月に欧州連合(EU)から離脱(Brexit)するのにともない、欧州原子力共同体(ユーラトム)からも離脱予定となっていることから、ONRと政府は、Brexit後も国内民生用原子力部門が確実に活動を続けていけるよう、原子力保障措置法の施行など様々な準備作業を協力して進めている。2013年に改定されたユーラトムの「電離放射線に対する防護のための国際基本安全基準指令(BSSD)」に基づいて、新しい緊急時対策の実施に向けた支援手段も開発するとしている。

 ONRは、民間原子力産業の安全規制を担当する独立の特殊法人として、2014年に正式に発足。国内の既存原子力発電所や新設計画、軍事用施設、放射性廃棄物とその輸送等について安全・セキュリティ面の規制を担当するだけでなく、ユーラトムの現行活動が円滑に進むよう手助けすることにより、英国が保障措置上の義務を果たせるよう支援している。
 2019年までの活動計画では、国内原子力産業が新たな局面を迎えつつあるとONRは指摘。具体的には、クリーン・エネルギーによる成長戦略や産業戦略における主要要素として、政府が原子力に責任を持って取り組んでいる点に言及しており、ONRとしても引き続き、Brexitで必要になる膨大な規制業務への準備を整えていく考えを表明した。
 
 優先する分野としてはまず、「原子力セクターの安全・セキュリティ改善」を特定しており、(1)英国が国際的な保障措置基準を満たすことを可能にするSSACの開発と(2)BSSDに基づく緊急時対策の実施支援に加えて、(3)国民に代わって産業界の責任を問うというONRの中心的規制機能の維持――を挙げた。
また、(4)として、ONRの規制に対する国民の信頼やステークホルダーの関与を促進するとともに、2017年のONR活動の中でステークホルダーが改善を要すると指摘した部分に取り組むとしている。
 続いて、「ONRスタッフの持てる力を最大限発揮する」ため、(5)専用の教育機関を通じてONRの継承プランニングや運営能力を強化し、組織としての事業継続力、管理面やリーダーシップ面のスキルを改善すると明言。このほか、(6)スタッフの育成・管理を一貫して行える優れたリーダーを配属できるよう、ONRの運営管理構造を簡素化する、(7)ONRの方向性を維持するための全体的アクションプランを通じて、2017年の調査で改善が必要とされた部分に集中的に取り組む――も挙げている。
 さらに、「優秀かつ持続可能な組織になる」ことを目指して、ONRは(8)独自のネットワークを構築してサイバー・セキュリティ対策と情報管理を強化すると指摘。また、(9)作業方法のIT化といった改革を進めて、ONRの運営環境を近代化、(10)ONR全体の効率性向上や、知識管理などの主要規制プロセスの簡素化・標準化を目標とする2020年までのプログラムを開始する――としている。