ブルガリアで頓挫したベレネ計画、実現に向け投資家選定の可能性
ブルガリア・エネルギー省のT.ペトコワ大臣は5月14日、ルーマニアとの国境に近いサイトで2012年に建設中止となったベレネ原子力発電所プロジェクトの実現について、議会から承認が得られ次第、年内にも戦略的投資家の選定手続を開始できるとの見通しを明らかにした。これは、同プロジェクトで製造済みだった一部機器の利用可能性について、ブルガリア科学アカデミー(BAS)が昨年11月に公表した分析結果と、今月10日に中国核工業集団公司(CNNC)が同プロジェクトへの出資に関心を持っていることが確認された事に基づいている。同相は、数日以内にベレネ計画の資産活用に関する報告書を議会に提出する予定だとした上で、政府からの資金保証や長期間の電力買取契約なしで、市場原理に基づいて同プロジェクトを実現することを目指していると改めて強調した。
ベレネ計画では2006年にロシアのアトムストロイエクスポルト(ASE)社が主契約者に選定され、100万kW級のロシア型PWR(VVER)が2基建設されることになっていた。しかし、独RWE社が計画から撤退した後は資金調達の目処が立たず、議会は2012年3月に建設中止を決定した。1号機用にすでに製造されていた長納期品と2号機用の一部機器は未使用のまま倉庫に保管中であり、国際仲裁裁判所は2016年6月、ASE社への支払い約6億ユーロ(約786億円)をブルガリアに命じる判決を下している。
エネルギー省によると、2017年1月に国営ブルガリア・エネルギー・ホールディング(BEH)社は、2050年頃を展望した2030年までの将来的エネルギー戦略の基盤とするべく、国内電力部門の全体的な開発戦略の策定をBASに依頼。BASは、ベレネ計画の関係資産を活用するシナリオも含めて分析を実施し、結果として同資産の活用可能性を示す根拠が明らかになったと述べている。
今年3月になると同国の議会は、ベレネ計画の機器を活用する最良のオプションを6月末までに案出すべきだとの方針を決定。これを受けたエネ省は政府の最優先事項として、関係企業であるBEH社と傘下のブルガリア電力公社(NEK)、同じくBEH社傘下で国内唯一の原子力事業者であるコズロドイ原子力発電会社等の専門家で構成される作業部会を起ち上げた。エネ相はその際、この事業で最も深刻な課題は資金調達であるとした上で、欧州投資銀行がプロジェクトへの参加に関心を持っていると指摘していた。
投資家選定に関する今回のエネ相発言は、ロシアのソチで開催されていた国際原子力フォーラム「アトムエキスポ」で、記者団に対し述べられたもの。同相は、ベレネ計画ではこれまでに国民の税金30億レフ(約2,010億円)が投入された事実に触れ、政府としては出来るだけ、同計画の資産を活用したいと考えていると説明した。計画自体は欧州委員会がすでに承認済みであり、サイトも認可されていることから、同じ地域で同様のプロジェクトを進めるよりメリットがあると指摘。国の利益を最大限にすることが可能な戦略的投資家を選定して、同プロジェクトにおける利点すべてを追求したいとの抱負を表明している。