米規制委スタッフ、廃止措置に移行する原子炉の要件修正を委員に提案

2018年5月23日

 米国の商業炉が廃止措置段階に移行した後の要件緩和を、原子力規制委員会(NRC)のスタッフが委員に提案していることが5月22日に明らかになった。
 原子炉の廃止措置プロセスを安全かつ効率的に進める事を目的に、同プロセスの段階毎に放射線リスクが低下していくのに合わせて、14の技術分野における規制で相応の等級別アプローチが取られるよう、現行の原子力関係連邦規則(10 CFR)の8項目で修正を勧告する内容。住民の健康と安全に対する適切な防護体制を保ちつつ、規制に最大限の柔軟性を持たせるため、NRCスタッフは関係分野で新たな代替要件を策定することと、稼働中原子炉に対する規制と廃止措置に移行する原子炉への規制を区別することを提案している。
 同提案を75日間のパブコメに付すための承認が委員から得られた後、NRCスタッフは2019年10月までに修正規則の最終案を策定し、改めて委員に提示すると見られている。

 NRCによると、運転を永久に停止し燃料が抜き取られた原子力発電所では、稼働中の発電所と比べてオフサイトへの放射線放出リスクはかなり低く、起こり得る事故の種類も非常に少ない。このため、廃止措置上の要件も、安全・セキュリティを継続的に確保しつつ、時間の経過とともに低下するリスクと合致させるべきだと指摘した。現状では規制のいくつかの分野で、稼働中原子炉向けの条項と永久閉鎖された原子炉向け条項を区別する手段がなく、閉鎖炉を現行規則の適用から適宜除外することで対応中。NRCとしては混乱を防ぐための取り組みとして、廃止措置に移行する原子炉に対し持続可能な規制の枠組を提供する考えだ。
 それにより、現行規則の適用除外や認可の修正等に頼ることなく、廃止措置プロセスを一層オープンで効率的、かつ予測可能なものに改善することができるとNRCは強調。具体的に、廃止措置プロセスにおける4つの段階、――(1)運転の永久停止と炉心からの全燃料抜き取り、(2)貯蔵プール内で使用済燃料の発熱量が十分に低下、(3)すべての燃料を乾式貯蔵施設に移送、(4)すべての燃料を発電所サイトから搬出――で、放射線リスクの低下に合致した等級別アプローチの採用を提案中だとした。

 規則の変更等を実施する14の技術分野のうち、NRCはまず発電所におけるオンサイト、オフサイトの「緊急時対策」を例示。現行要件に代わるアプローチとして、廃止措置プロセスの4段階毎に放射線リスクに合わせた4つのレベルの緊急時計画基準を定めるとした。
 「物理的安全保障」の分野では、原子炉が廃止措置に移行した際の変更点として、以下の4規則を適用することになると説明。すなわち、(1)一定条件の緊急時や悪天候時において、燃料の取り扱い担当者に対し安全対策の一時的な停止を許可する、(2)深刻な炉心損傷を防ぐための核物質防護要件を事業者から免除する、(3)中央制御室を重要区域に指定するよう事業者に義務付けていた要件を撤廃する、(4)警報ステーションと中央制御室間の意思疎通を維持する要件を、警報ステーションと燃料取り扱い担当者や事業者幹部との意思疎通要件に差し替える――である。
 また、「サイバー・セキュリティ」分野では、使用済燃料貯蔵プール内の発熱量が十分下がるまで、発電所内でデジタル・コンピューターと通信システム、およびネットワークの防護要件を継続的に適用することを提案。ただし低下した後は、この関係の認可条件を解除するとしている。