米NJ州知事が原子力支援法案に署名
米ニュージャージー(NJ)州のP.マーフィ知事は5月23日、州内の原子力発電所に対する財政支援プログラム「ゼロ排出クレジット(ZEC)」を盛り込んだ法案に署名したと発表した。
同法案は4月12日に州議会が可決していたもので、CO2を排出しない原子力は多様な電源構成における重要な要素との判断による。マーフィ知事は同日、州内で再生可能エネルギー開発を段階的に拡大していく法案、および2050年までに州内のエネルギーを100%クリーン・エネルギーで賄うことを目指した「改訂版エネルギー・マスター・プラン」の策定を命じる行政命令にも署名。これらにより、NJ州がクリーン・エネルギー開発におけるリーダーとして評価されるための、新たな一歩が刻まれたと同知事は強調した。州内の原子力発電所温存を目的とした政策措置は、これまでにニューヨーク(NY)州、イリノイ州、およびコネチカット州でも成立している。
米国ではB.オバマ前政権が2014年6月、電力部門からのCO2排出量を2030年までに2005年水準から30%削減するという米国初のガイドライン「クリーン・パワー・プラン(CPP)」を提案。これに基づき、同政権の環境保護庁(EPA)は翌2015年8月、CO2の排出量削減を可能にするエネルギー計画の作成を各州政府に指示した。しかし、2017年1月に大統領に就任したD.トランプ氏は「地球温暖化は科学的に立証されていない」との持論の持ち主。同年10月にEPAは、トランプ政権による新しい方向性に沿った政策変更として、CPPの撤廃を提案している。
同政権はまた、これに先立つ2017年6月、温暖化対策の新しい国際的枠組であるパリ協定から離脱する方針も正式表明しており、これに対してNY州のA.クオモ知事とカリフォルニア州知事、ワシントン州知事は、これら3知事が共同議長を務める州政府の連合体「米国気候同盟」を結成。CPPにおける目標の達成など前政権による政策も含めて、温暖化防止に向けた活動を州政府が積極的に進めて行く方針を表明した。
全米50州の州議会の共同組織「全米州議会・議員連盟(NCSL)」によると、米国では州政府が原子力発電所の将来を決定付ける重要な役割を担っている。そのため、米国の総発電量の約2割を供給してきた原子力発電所が早期閉鎖のリスクにさらされている現状については、原因とされる電力卸市場の構造や低価格な天然ガス、電力需要の伸び悩み、再生可能エネルギー開発の奨励策などに対して各州議会の関心が高まり、議論が継続されるよう促したいとの認識を示している。
NJ州のZECプログラムは、州内の原子力発電所が総電力需要量の約4割を賄うとともに、無炭素電源としても群を抜いていることから、その維持を目的としている。NJ州では現在、今年10月に閉鎖予定のオイスタークリーク原子力発電所のほかに、セーレム1、2号機とホープクリーク1号機が稼働中。ZECプログラムへの参加を希望する原子力発電所は、NJ州における大気質の改善に多大な貢献をしていることや、財政支援がなければ3年以内に早期閉鎖に追い込まれる恐れがあることを実証しなくてはならない。また、その他の州法や連邦法に基づく同様の支援金を受け取っていないことも、毎年証明する必要がある。
今回の法案成立により、NJ州の公益事業委員会(BPU)には広範囲の裁量権が与えられ、原子力発電所の財務情報や申請内容の分析で外部専門家を雇用することが可能になった。また、必要に応じて、原子力発電所の経済的困窮状況に合わせた支払いが、ZECに基づいて行われるよう調整するとしている。