仏ロが原子力平和利用分野における戦略的連携を強化

2018年5月29日

         ©ロスアトム社

 ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は5月25日、仏国の原子力・代替エネルギー庁(CEA)と、原子力平和利用分野における仏ロ間の連携を強化する戦略的合意文書に署名したと発表した。
 原子力機器の設計・供給も含めて、第三国における産業プロジェクトの共同実施を両者が目指すという内容で、「ロシア版のダボス会議」と呼ばれるサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)が開催されたのに合わせて結ばれた。これにともない、両国の原子力関係企業同士も複数の協力覚書や長期契約を締結しており、仏ロ双方が第三国で実施する原子力発電所建設プロジェクトに、双方が積極的に関わっていく方針であることが明らかになった。

 ロスアトム社とCEAの戦略的合意文書は、訪ロしていた仏国のE.マクロン大統領とロシアのV.プーチン大統領による立ち会いの下、24日にロスアトム社のA.リハチョフ総裁とCEAのF.ジャック長官が署名した(=写真)。エネルギーの効率化と再生可能エネルギーの両分野で、両国間の協力に新たな推進力をもたらすことを目的としており、原子力発電開発に対する一般的アプローチと、パリ協定の目標を達成する際の役割を共有するという双方の意思を明確に表明している。
 原子力に対する認識として両社はまず、再生可能エネルギーと同じく温室効果ガスの排出を抑えることができる高度で近代的な技術であり、信頼性や経済的な効果も高いエネルギー源だと指摘。その上で、技術面や商業面での協力を強化する具体的範囲として、エネルギーの効率化と代替エネルギー源、エネルギー貯蔵システムの開発、高速中性子炉開発、原子力発電所のエンジニアリングと機器の供給、原子燃料の供給、使用済燃料の再処理と回収物質の再利用――などを列挙した。

RASU社とシュナイダー社
 同じく24日に署名されたのは、ロスアトム社の傘下で計測制御(I&C)系供給と電気工事を一括で請負っているRASU社と、仏国の大手重電機器メーカーであるシュナイダー・エレクトリック社間の協力覚書。これにより両社は原子力発電所用と送電グリッド用の電気機器について、安全性と信頼性および競争力の改善を目指した両社間の協力を強化する。
 両社はまた、ロシアその他の国際的な原子力プロジェクトでも、協力していく可能性を探る方針。特に、BOO(建設・運転・所有)方式やBOOT(建設・所有・運転・所有権の譲渡)方式のプロジェクトも含めて、ロシア製原子力発電所が国外で建設される際、RASU社はシュナイダー社製の電気機器を供給できるか検討する。その見返りとして、シュナイダー社側も自身の国際プロジェクトでは、RASU社の生産施設やその他のロスアトム社関連企業の施設において電気機器の製造を促進することになる。

RASU社とフラマトム社
 RASU社はこのほか、旧アレバ社の原子炉機器設計製造部門だったフラマトム社と25日に協力覚書を締結。主な目的はI&C系分野で双方が利益を得るための協力強化で、その中でも特に、国際市場におけるロシア型PWR(VVER)の建設計画やフラマトム社の原子力発電所建設プロジェクトに、お互いが参加できるような枠組を構築するとした。また、原子力インフラの開発とメンテナンスおよび近代化の分野、ロシア製機器を欧州や国際社会の基準に適合させる認証支援の分野でも両社は協力。さらに、ロスアトム社が国外で新たに実施するVVER建設プロジェクトに、フラマトム社製のI&C系を導入する方法も検討するとしている。
 この件についてRASU社は、両社間ではすでに常設作業グループを設置済みであることを明らかにしており、フラマトム社もこの協力には明らかな相乗効果が見込めると述べた。両社には長年にわたって、ロシアの原子力発電所で共同作業した経験があり、今回の覚書で設定された個別の協力案件の条件は、国際市場においても適用できるとフラマトム社は指摘。最初の重要市場として、トルコ、ハンガリー、エジプトの名を具体的に挙げている。

TENEX社とEDF
 このほか、25日にはロスアトム社の下でウラン製品・サービスを販売するTENEX社が、仏国の商業炉すべてを所有しているフランス電力(EDF)と長期契約を締結した。仏国の原子力発電所の使用済燃料集合体から回収したウランをTENEX社がリサイクルするという内容で、EDFはこれにより天然資源の節約を図るとともに経済状況を改善。契約の実行には欧州原子力共同体(ユーラトム)の承認が必要だが、EDFが燃料供給源を多様化することにもつながるとの認識を示した。
 TENEX社は1973年に初めて、仏国にウラン製品を供給したという事実に言及。その45周年記念の年に大型契約を新規で結べたことは、両社にとって非常に象徴的だとの感想を表明している。