仏規制当局、原子力機器の品質保証で要件強化
仏原子力安全規制当局(ASN)は6月8日、原子力機器の製造過程における不正行為等の防止・検知方法を改善するため、事業者自身の監視システム拡充や外部点検機関の活用など、産業界への要件を強化すると発表した。
同国では2015年4月、建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)で原子炉容器(RV)の鋼材組成に異常が検知された。これに端を発して、アレバ社(当時)傘下のクルーゾー・フォルジュ社が1965年以降に製造した約400点の原子力部品で品質証明書に不正が見つかったことから、ASNは原子力機器の製造過程等で様々な瑕疵(CFSI)が発生するリスクを低減する複数の対策を案出。9月1日までにこれらの実施状況を事業者と製造業者に報告させるほか、CFSIの疑いについて内部通報者からASNが報告を受けられるようにするシステムも、今年後半に構築させるとしている。
FL3のRV上蓋と下鏡における鋼材組成の異常問題は、クルーゾー社で大掛かりな組織的、技術的欠陥が生じていたことを露呈し、日本を含め仏国以外でも同様の懸念が生じる事態となった。こうしたCFSI案件のいくつかは事業者や製造業者が自ら検知しており、ASNは事業活動上の懸念はごくわずかだったとしたものの、安全確保上の意味合いは大きかったと指摘。事業者や製造業者自身による監視も含めて、点検体制が盤石であっても、また、原子力産業界の要求する品質が高いレベルであっても、CFSIの発生リスクを完全にぬぐい去ることは出来ないとの認識を示している。
このためASNは、この種の不正の防止と検知で産業界に適用可能な要件の強化方法と、産業界自身の監視システムの改善方法を評価。結論として、以下の対策を提示した。すなわち、
・データの機密保護で改善を義務付けるなど、機器の製造過程や運転期間中の品質に責任を負う製造業者や事業者が自ら行っている措置を強化する、
・製造工程の監視支援やサンプル検査、記録の照合検査等で第三者の点検機関を活用する、
・ASNの監視慣行、特に点検手法などを改善する、
・事業者が不正行為を検知した場合、ASNへの報告が制度的に行われるよう義務付ける、
・内部通報者からの警告収集システムを設置する――である。
ASNは昨年末の時点ですでに、事業者と製造業者に対して、CFSIの発生防止と検知、および取扱いに関わる義務と責任を改めて認識するよう促した。5月15日付けの通達では、この課題で適用される規制要件について説明しており、その中でも特に、従業員や環境の防護で事業者が義務付けられている総合管理システムにおいて、CFSIの発生リスクに一層配慮することを要求。監視活動を第三者の点検機関に委託することも、事業者と製造業者に対して求めていた。
これらすべての対策が適切に適用されているか、ASNは9月1日以降の点検時にチェックする方針である。差し当たり、過去数か月間に実施した約10回の点検時にASNはCFSIの発生調査も含めたほか、年内には不正防止の専門家も2名雇用する予定。この問題に関する追加訓練を、検査官に実施する考えを明らかにした。