米エネ省が国立研でフラマトム社製・事故耐性燃料を試験
米エネルギー省(DOE)原子力局は6月15日、傘下のアイダホ国立研究所(INL)にある新型試験炉(ATR)で、仏フラマトム社製・事故耐性燃料(ATF)の試験を実施中だと発表した。
DOEが2012年に開始した「ATF開発プログラム」の下で行われているもので、これにはフラマトム社のほか、GE社と日立の合弁企業であるグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社、およびウェスチングハウス(WH)社の3グループが産業界から協力。INLでは2021年1月まで試験を継続するとしており、この秋にはGNF社とWH社がそれぞれ製造したATFの試験燃料棒も加わる予定。ATR試験の完了後は、同じくINL内にある燃料棒の破損実験施設「過渡事象試験炉(TREAT)」を使って、それぞれの燃料概念について安全運転が可能な限界点を探ることになる。
DOEのATF開発支援は、2011年の福島第一原子力発電所事故を契機に、炉内で冷却機能が喪失した場合でも長時間持ちこたえ、発電所の安全裕度を拡大し得るような高性能の燃料開発を目指して始まった。米議会は事故耐性が強化された軽水炉燃料と被覆材の開発プログラムに2012会計年度から予算措置を講じており、2022年までにATFの先行燃料集合体を商業炉に装荷、2025年までに市場に供給するとの目標を提示。技術的な設計目標としては、極限の状況下における水素の発生量削減、核分裂生成物の保持、高温蒸気と被覆材の反応改善などとしており、産官学が協力して3段階構成の開発・実証戦略を進めている。
第1段階のフィージビリティ・スタディでは、先進的な燃料と被覆材の概念について、経済性や安全性、環境影響等の分析評価と絞り込みを実施。2016年10月からは第2段階に移行しており、許認可の取得が可能と思われるATFの製造、大規模照射試験など、開発・認定関係の活動が行われている。
フラマトム社がINLのATRを使って試験中のATFは、クロムをコーティングした被覆管の概念とクロム合金の酸化皮膜を使った燃料ペレット概念に基づいている。特殊なコーティングにより、被覆管を高温による損傷と酸化から防護することを狙っており、事故条件下においても燃料ペレットで長時間の耐久性と高い性能を追求。これにより、商業炉では今よりも一層安全性の高い運転が可能になるとしている。
ATR試験では具体的に、商業用軽水炉の冷却条件を模した特殊なテスト・ループに、26本の縮小版燃料棒を装荷。ATRは燃料サンプルを急速に劣化させる機能があるため、数年分あるいは数十年分の中性子損傷をたった1か月で生じさせることができる。試験で得られた性能データは、米原子力規制委員会(NRC)が同燃料の認定審査を行う際に活用されることとなる。
一方、GNF社は今年3月、「IronClad」の名で知られるクロム・アルミ鉄合金の燃料被覆材、および「ARMORコーティング」を施した2種類の試験集合体を米ジョージア州のE.I.ハッチ原子力発電所1号機に装荷した。2019年には、イリノイ州のクリントン原子力発電所にも装荷する計画である。
また、WH社は炭化ケイ素材料(SiC)製の被覆管、シリサイド(U3Si2)燃料ペレットの概念に基づくATFを開発中。2019年にもイリノイ州のバイロン原子力発電所で、同社製ATFとなる「EnCore」の実証用燃料棒装荷を目指すとしている。
ATFの商業化を急ぐ理由として、DOEは米国内で稼働する既存炉の運転期間を挙げた。現在、約100基の商業炉のうち約90基が、当初の運転期間40年に加えて20年間の延長を許されている。しかし、2回目の運転期間延長を申請して合計80年間の運転継続許可を受けない限り、2030年代にこれらの運転認可は満了してしまう。その前にATFを商業化することにより、既存炉の性能を向上させ、運転期間の延長見通しを改善することが出来るとDOEは指摘している。