フォーラトム、欧州原子炉の運転長期化支援をECに要請
フォーラトム(欧州原子力産業会議連合)は6月20日、地球温暖化防止に向けたCO2の排出量抑制で欧州諸国が目標達成を目指すのであれば、原子力発電所の長期的な運転継続(LTO)が大きな役割を果たすことを認め、相応の支援を行うべきだとする考えを欧州原子力産業界全体の見解として、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)、およびその他のEU関係機関に訴えた。
運転長期化プログラムを実施しなかった場合、欧州では今後10年間に最大50基の原子炉が閉鎖すると予測されているが、原子力LTOにより資本投資費が低下するなど、多くの利点があると指摘。とりわけ、信頼性が高く低炭素な電源を、最も低いコストでエネルギー・ミックス中に維持することが出来るとしており、CO2の排出抑制目標達成の面から、原子力のLTOは欧州の将来にとって欠くべからざるものだと強調している。
この見解は、ベルギーのブリュッセルで前日に開催されたワークショップ「欧州における将来的なエネルギー・ミックスの形成―原子力LTOの役割」で、フォーラトムのY.デバゼイユ事務局長が表明したもの。同事務局長によると、現在EU域内では14の加盟国で126基の商業炉が稼働しており、EU全体の総発電量の4分の1以上を供給している。また、ECがEU域内の原子力発電所の全ライフサイクルで必要な投資額を試算した「原子力の説明プログラム(PINC)」では、原子力は2050年まで欧州のエネルギー・ミックスで重要な役割を担い続ける一方、その時点までの運転継続に必要な投資額は約400億~500億ユーロ(約5兆1,130億~6兆3,916億円)とされていた点に言及した。
このような背景から、同事務局長は「50基もの商業炉がなくなれば、欧州の脱炭素化が大幅に減速することは避けられない」と強調。CO2排出量が現状レベルに留まるとともに、再生可能エネルギー源を7年間拡大し続けたのと同等の削減量が失われるとした。また、2020年の排出削減量が目標値を大きく下回ることが確実となったドイツの例について、「2011年に原子力の代わりに、2,000万kW分の石炭火力廃止を決定していれば、今頃は排出量の削減目標を達成して、温暖化対策における欧州の覇者と評価されていたかもしれない」との認識を明らかにした。
今回の原子力LTOワークショップでは、様々なEU関係機関のほかに、各国の規制当局や原子力産業界から多くのステークホルダーが参加。LTOの現状や欧州の将来的なエネルギー・ミックスにおける役割に加えて、産業界におけるLTOの必要性と課題について議論した。また、EU域内のエネルギー供給保証と温暖化防止活動に対する原子力LTOの貢献、原子力の専門知識と技術、および熟練技能者の雇用の維持でLTOが果たす役割、各国経済におけるLTOの影響についても意見が交わされた。