早期閉鎖リスクを回避した米原子力発電所で訓練センター拡張
米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン社は6月29日、イリノイ州政府の原子力支援法により早期閉鎖のリスクを回避したクアド・シティーズ原子力発電所(91.2万kWのBWR×2基)で、従業員用訓練センターの拡張工事が完了したと発表した。
2016年12月に同州で成立した「将来的なエネルギー雇用に関する法(FEJA)」は、CO2を排出しないという原子力発電設備の利点に対し、発電量に応じた補助金を提供するという財政支援プログラム「CO2のゼロ排出基準(ZES)」を設定。収益の大幅な悪化により、同州内のクアド・シティーズ発電所とクリントン発電所(107.7万kWのBWR)はそれぞれ、2018年6月と2017年6月に早期閉鎖されることになっていたが、ZESプログラムの支援を受けて少なくとも10年間、運転を継続することが可能になった。同法の成立後に着工した訓練センターの拡張設備は、地元の業者や作業員など、直接雇用と間接雇用も含めて合計600名分の雇用を州内で生み出したとエクセロン社は強調している。
イリノイ州のB.ラウナー知事がFEJAに署名したのを受けて、エクセロン社は2017年、州内で保有する6サイト・11基の商業炉で燃料交換や保守点検作業などを実施した。FEJAでは、州内の一般家庭を含む顧客に適正な価格での電気代を保証するとともに、高収入の雇用の維持と創出、原子力を含むクリーン・エネルギーとエネルギーの効率化に数十億ドル規模の投資を州全体で約束。今回の訓練センター拡張は、クアド・シティーズ発電所における総額2,000万ドルという複数の設備改良・建設プロジェクトの一環であり、エクセロン社は700万ドルの建設契約を州内の最大都市シカゴを本拠地とする企業と締結していた。
この拡張工事の結果、訓練センター建屋は約2倍の規模に拡大したほか、最先端の訓練設備が装備されたと同社は説明。また、老朽化により頻繁なメンテナンスを必要としていた古い建屋の閉鎖が可能になるとともに、年次の燃料交換停止時に加わる臨時作業員などに対し、近代的かつ専門的な学習環境を提供できるとした。
「専門的学習センター」の呼称で生まれ変わった訓練センターのテープ・カット式で、エクセロン社の上級幹部は「今月は奇しくも、クアド・シティーズ発電所の早期閉鎖が予定されていた月だ」と述べた。また、州知事や州議会議員を始めとする多くの地元支援者の尽力により、同発電所は今後もクリーンな電力と高収入の雇用をイリノイ州民に提供し続けることが出来るとし、単なる拡張工事の完了に留まらず、同発電所の明るい未来に向けた新たな1ページが開かれたとの認識を表明した。
エクセロン社はこのほか、使用済燃料貯蔵パッドの拡張工事として1,000万ドルを超える契約を最近、地元企業に発注した。訓練センターの拡張工事と同様、作業の一部は複数の地元企業が下請することになっており、これはエクセロン社のサプライヤー多様化方針を裏付けるものだと強調している。