ARC社、カナダでのSMR建設目指しNBパワー社と協力
米メリーランド州の有限責任会社、アドバンスド・リアクター・コンセプツLLC(ARCニュークリア)社は7月9日、第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づき開発中の先進的小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」について、カナダ東部のニューブランズウィック(NB)州で商業化を進めるため、同州内で商業炉を所有するNBパワー社と協力することになったと発表した。
ARCニュークリア社のカナダ法人やNBパワー社の子会社も含め、一丸となって同SMRの開発と許認可取得を加速し、NBパワー社のポイントルプロー原子力発電所(71.2万kWのカナダ型加圧重水炉)敷地内で初号機を建設する可能性を探る。将来的には、カナダの他のサイトや世界中で建設していく道を模索するほか、NB州を「ARC-100」技術に基づく先進的SMR製品の中核的研究拠点や製造拠点とすることを目指す。このようなプロジェクトを通じて同社は、NB州内で原子力サプライ・チェーンが構築されるとともに、高収入の雇用や新たな経済チャンスがもたらされるとの認識を示している。
ARCニュークリア社によると、「ARC-100」は電気出力10万kWのナトリウム冷却・プール型高速中性子炉となる予定で、米エネルギー省(DOE)の国立研究所で30年以上にわたって運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の技術に基づき金属燃料を使用。この他にも、EBR-IIに関わった主要メンバーがARCニュークリア社の熟練エンジニアとして、同炉で実証済みの技術を「ARC-100」に提供したとしている。同設計はまた、既存の軽水炉と比べて機器の製造コストが低く、工期も18~24か月と短期間で済むという。受動的安全系を備えているため、炉心溶融や電源喪失といった事態が発生しない点も強調している。
「ARC-100」の許認可取得と建設および商業化については、同様にEBR-IIをベースとするナトリウム冷却高速炉「PRISM」を開発中のGE日立ニュークリア・エナジー(GEH)社が、昨年3月からARCニュークリア社に協力している。「PRISM」の知的財産権や設計ツールなどの使用をARCニュークリア社に許可するなどして、カナダにおける「ARC-100」の初号機建設計画を後押し。昨年秋からは両社の共同チームが、同設計をカナダ原子力安全委員会が提供する予備的設計評価サービス「ベンダー設計審査」にかけている。
NBパワー社はARCニュークリア社との協力合意について、「NB州を先端エネルギー分野のリーダーに押し上げる大きな可能性があるだけでなく、州内の経済成長にもつながる」と評価。NB州のエネルギー資源大臣は、「ポイントルプロー発電所という素晴らしい財産と関係者のノウハウのお陰で、我が州はエネルギー分野でこのような好機を捉える立場を得ることができた」と述べた。
ARCニュークリア社も、NBパワー社の協力が生み出す好機とNB州政府が下した戦略的判断を歓迎。「ARC-100」の固有の安全性を実証し、シンプルかつコスト面でも有利な設計を実現したいとした。また、米国とカナダ両方の輸出管理規則を遵守するとともに、環境保全にも全面的に配慮。同時に、他のすべての電源に対しても競争力のある設計にする方針だとしている。