GEH社、エネ省とコスト分担予定のSMRプロジェクトでチーム結成
米国のGE日立ニュークリア・エナジー(GEH)社は7月16日、同社が開発している出力30万kWの小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」が、米エネルギー省(DOE)による先進的原子力技術開発支援プロジェクトの対象に選定され、そのための専門家チームを産業界の主要企業で結成したと発表した。
DOEは今月10日、民間との費用分担により米国内で先進的原子力技術の研究開発を進めるというイニシアチブの第2弾として、約2,000万ドルを追加拠出すると発表(*)。GEH社が主導する「LNG火力との競合に向けた原子力プラントのコスト削減プロジェクト」は、9件の支援対象プロジェクトの1つとなった。GEH社のチームには、大手の原子力発電事業者であるエクセロン社、総合エンジニアリング・建設とプロジェクト管理の専門企業のベクテル社、日立GEニュークリア・エナジー(HGNE)社、およびマサチューセッツ工科大学(MIT)から専門家が参加。プラントの設計や建設工法、発電所運営などを専門とする各社が結束して「BWRX-300」設計の簡素化を進めるとともに、建設コストや運転・保守(O&M)コストを大幅に削減する方法を模索していく考えだ。
DOEは同プロジェクトに対して約190万ドルを提供予定である一方、産業界側からは約48万ドルを拠出。商業炉の建設は2030年代初頭を目指しているとした。GEH社は今年5月、「BWRX-300」の商業化促進で、潜在的な顧客の1人であるドミニオン・エナジー社が出資参加を決めたと発表していたが、現段階ではドミニオン社の原子力発電所サイトでの「BWRX-300」建設計画はない点を明らかにしている。
GEH社によると、「BWRX-300」設計は米原子力規制委員会(NRC)が2014年に認証した出力150万kWの同社製「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の設計とライセンスをベースとしている。設計の飛躍的な簡素化により、ほかの軽水冷却式SMRや既存の大型炉と比べて出力あたりの資本コストは最大60%の削減を目指しており、達成できれば「BWRX-300」はコンバインド・サイクル・ガス発電や再生可能エネルギーとも経済的に競合可能になると見込んでいる。
また、大規模な冷却材喪失事故(LOCA)の発生率をゼロにすることも同設計の目標の1つであるため、その発生に関わる大型の構造物を排除。これにより設計の簡素化がさらに進み、製造・建設と運転・保守が容易になるほか、必要な敷地占有面積もわずかになるとした。同設計ではさらに、自然循環を活用した受動的安全系を採用しており、深さ約20mの立て坑に設置するため、天然の防護効果も得られると説明している。
エクセロン社は今回、「このプロジェクトへの参加を通じて、クリーン・エネルギーを欲する顧客に明るく確実な未来を保証することができる」とコメント。原子力は米国内で発電される無炭素電力の最大シェアを占めるなど、CO2の排出抑制目標を達成する上で重要な要素であり、米国のエネルギー・ミックスにおける一部分として存続しなければならないと強調した。
HGNE社原子力国際技術本部の吉村真人本部長は「BWRX-300」について、「原子炉の中で直接、蒸気を循環させるという利点を持つBWRを究極的に簡素化したもの」と説明。GEH社の素晴らしいプロジェクトに引き続き貢献していけるよう、日本のプロジェクトで日程通り・予算内で完成させる際に培ってきた先進的な機器製造や建設に関する専門的知見、英国版ABWRの開発を通じて強化したエンジニアリング能力を提供していきたいと述べた。
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