ウクライナのロシア製商業炉でWH社製燃料を全炉心装荷

2018年7月23日

©エネルゴアトム社

 ウクライナは稼働中の商業炉15基すべてがロシア型PWR(VVER)だが、このうち南ウクライナ原子力発電所3号機(100万kW)は同国で初めて、米国籍のウェスチングハウス(WH)社が製造した燃料集合体163体が全炉心に装荷された原子炉になった。

 これは、ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社が7月19日、WH社と開催した会合で明らかにしたもの(=写真)。同公社は20年以上前からWH社と協力関係にあり、南ウクライナ3号機を含めて15基中6基ですでに、WH社製の燃料を装荷している。
 南ウクライナ3号機はWH社製燃料の装荷試験用として使われていたが、ザポロジェ原子力発電所では、2016年6月時点で5号機(100万kW)の炉心にWH社製燃料を25%、TVEL社などロシア製のものを75%装荷。2017年6月にこの比率が50%対50%となったのに続き、今年は75%対25%に逆転することになっている。1、3、4号機(各100万kW)でも現在、WH社製とロシア製の燃料が混合で装荷されており、エネルゴアトム社はWH社製燃料の比率を徐々に拡大していく方針。2019年から2021年にかけて、ザポロジェ発電所の4基でも、全炉心にWH社製燃料を装荷するとの見通しを示している。

 1991年に旧ソ連邦から独立したウクライナでは、旧ソ連時代の原子力発電所が稼働しているのに加え、1986年のチェルノブイリ事故後もロシア製の原子力発電所が複数基、建設された。しかし、近年はクリミアの帰属問題や天然ガス紛争などを原因に、ウクライナ政府のロシア離れが急速に進展。ロシアへのエネルギー依存を軽減するため、建設途中の原子力発電所の完成計画で契約先をロシア企業から韓国企業に変更したほか、燃料についてもロシア企業以外からの調達策を進めている。

 WH社が製造するVVER用燃料は、ウクライナのこのような戦略の中で重要な役割を果たしており、2005年に同社製の試験用先行燃料集合体が初めて、南ウクライナ3号機に装荷された。現行の燃料売買契約は2020年に満了予定であるため、両者は今年1月、この契約を2025年まで延長することで合意。対象原子炉の基数も現行契約の6基を7基に拡大するという内容で、WH社はウクライナによる燃料調達先の多様化支援という点で同社の能力が証明されるとともに、戦略的パートナーとしての役割が強化されたと強調している。
 エネルゴアトム社もこの合意に基づき、ウクライナに今後納入される燃料関係機器は、WH社が米サウスカロライナ州コロンビアで製造したものと、WH社がウクライナの製造業者から調達したものになると説明した。また、燃料製造と燃料集合体の組立作業は、WH社がスウェーデンのバステラスで所有する工場で実施される計画。WH社によると、同社はエネルゴアトム社向け燃料製造を促進するため、過去数年間に大規模な投資を行っており、同工場では100万kW級VVER燃料に特化した製造ラインを設置済みだとしている。