仏国で建設中のEPR、溶接部の欠陥で完成が2019年に延期
仏国初の欧州加圧水型炉(EPR)となるフラマンビル原子力発電所3号機(PWR、163万kW)(FL3)を建設中のフランス電力(EDF)は7月25日、燃料初装荷の日程を最新スケジュールからさらに1年繰り延べ、2019年第4四半期に設定したと発表した。
今年2月から3月にかけて、主蒸気管を含む2次系配管の溶接部で「品質のバラツキ」が最初の総合点検で認められたのが原因で、EDFはその後、150か所の溶接部のうち148か所で再点検を完了。残り2か所についても今月末までに追加点検を終える予定だが、今年の第4四半期末に開始するはずだった燃料装荷の日程を再調整するとともに、総工費もこれまでの目標額から4億ユーロ(約519億円)増えて、109億ユーロ(約1兆4,148億円)に改めたことを明らかにした。
また、FL3の起動日に合わせて永久閉鎖することになっているフェッセンハイム原子力発電所の2基(各92万kWのPWR)については、運転計画にどのような影響が及ぶか現在審査中だとしている。
EDFによると、再点検済みの溶接部148か所のうち、85か所は規格に適合していた。しかし、33か所で品質上の欠陥があったため、修理を行う予定。また、20か所については欠陥が認められなかったものの、EDFがEPRの設計段階で定めた破断防止のための「高品質」要件に準拠していなかったため、溶接部の再加工を行うとした。さらに10か所に関してEDFは、発電所の全運転期間を通じて、高い安全性を確認するための特殊な方法を原子力安全規制当局(ASN)に提案。ASNは今後、この方法について詳細に審査を行うことになる。
今回の不備についてASNは、2次系製造後の点検を実施した業者の組織体制と作業条件が点検の質を損なったとしたほか、EDFとフラマトム社による監督も不適切であったと指摘。再発防止に向けて、EDFには監督する手段と組織の整備を要求するとともに、採用する溶接方法が配管の破断防止基準を確実に満たしていることを実証するよう義務付けた。
FL3の建設工事は、北部シェルブールの南西にある同発電所で2007年12月に始まっており、当時の完成予定年は2012年だった。しかし、国内で初めて建設される第3世代の最新設計であることから土木エンジニアリング作業の見直しが行われたほか、建設現場高所からの作業員の転落死、福島第一原子力発電所事故にともなう包括的安全評価審査などにより、スケジュールは再三にわたり繰り延べられた。
また、2015年4月には、アレバ社(当時)傘下のクルーゾー・フォルジュ社が製造した原子炉容器(RV)パーツで鋼材組成の異常が認められ、EDFはASNの指示に従い非破壊検査などの詳細試験を実施。ASNは2017年6月、RVパーツの定期検査回数の追加と早期の取り替えを義務付けた上で、「これらパーツの機械的特性は適切」との結論を公表していた。
FL3の冷態機能試験は今年1月に完了しており、建設現場では現在、EDFの作業チームと連携企業が総動員され、システムの性能試験など他のすべての試験や組立作業を継続中。今月中に開始予定だった温態機能試験は、年末までには開始できる見通しだと説明している。
EPR設計を採用した原子炉としては、FL3に先立つ2005年にフィンランドのオルキルオト原子力発電所で3号機(172万kW)(OL3)が着工したが、こちらも土木工事や規制関係書類の認証作業に時間がかかり、通常運転の開始は最新スケジュールで2019年9月が予定されている。一方、中国・広東省の台山原子力発電所で2009年と2010年に着工した2基のEPR(各175万kW)は、OL3とFL3の建設作業経験を活かして比較的順調に作業が進展。先に着工した欧州の2基を追い越して、1号機が今年6月に世界初のEPRとして送電を開始した。