WNAが原子力発電実績報告を公表、過去5年堅調に発電量は増加
世界原子力協会(WNA)は8月16日、「世界の原子力発電実績報告2018」を公表し、昨年の世界の発電量と建設の実績およびWNAが目指すハーモニー・ゴール(注記)達成についてその方向性を示した。
2017年末時点での世界の原子力発電量は、過去5年にわたり増加を続け、年間2兆5,060億kWhを記録したとしている。また、世界で運転中の原子炉は448基で発電規模は3.92億kWに達し、2016年末に比べて200万kW増加。新規炉4基が送電を開始し、その容量は337.3万kWになる。建設中は2基減って、59基。5基が閉鎖されたが、そのうちの2基は長期にわたり停止中の原子炉であった。
2017年に送電開始した原子炉の建設期間の中央値は58ヶ月。2016年の74ヶ月からは低減。この実績は2001年から2005年の期間と同じレベルとなる。
また、平均設備利用率は81%で2000年以来およそ80%の高い率を維持しており、1980年代の平均60%からは大きく向上している。WNAは「高い設備利用率は順調な運転実績を反映している」としている。しかし、いくつかの国では、負荷追従モードでの運転を行う例が増えており、結果年間の設備利用率が低くなっている例もみられる。
さらに、原子炉の実績に高経年化の影響は見られず、過去5年の設備利用率は運転年数に左右される物ではないことを示していると評価。
WNAのA.リーシング事務局長は、報告書のまとめ(結論)の部分で、次のように指摘している。
・原子力なしで持続可能なエネルギーの未来は考えられない。全ての低炭素エネルギーとの共存が必要。2050年までに世界の電力需要の25%を原子力が担うという産業界が目指すハーモニー・ゴールを達成するためにも設備利用率の高度化が必要となる。2017年時点の世界の平均設備利用率は、81.1%と2016年の80.5%より伸びており、20年以上およそ80%の数字は持続している。さらに、原子力発電の総量は、過去5年で1,600億kWh増加している。
・ハーモニー・ゴールでは、2050年までに10億kWの設備容量が必要とされている。そのためには、2016から20年の間に毎年1,000万kWの設備が開発されることが経過目標となる。2017年には、新規の原子力容量は、330万kWに止まったが、2018年と2019年には、この2年間で2600万kW以上が新規に運転開始予定となっている。
・次の10年間でのハーモニー・ゴール達成のペースを保つためには、さらに毎年平均3,300万kW増に加速することが必要となる。そのためには、次の3つの主要な分野でのアクションがとられるべきとなる。
1)エネルギー市場:原子力が有する価値と信頼性が認識され、他の低炭素技術と平等の機会を与えられること。
2)規制体制:安全性やセキュリティについて妥協することなく、国際的に一貫性があり、効率的かつ予見しやすい原子力許認可体制による調和のとれた規制プロセスが必要。
3)拡大を可能とする安全性認識:原子力の健康、環境、安全面での価値が他のエネルギー源と比較して、一般市民に理解されるための効果的な安全への認識が必要。
報告書の末尾では、現在、原子力は立地地域に対してもベネフィットをもたらし、国の経済を支援し、世界で高まるクリーンで信頼できる電力需要に応えている。我々WNAはハーモニー・プログラムを通じて、原子力発電が持続可能なエネルギーの未来に完全に貢献できるようにするために必要なステップを示している、と締めくくっている。
〈注記〉 ハーモニー・ゴールとは、WNAが2015年のシンポジウムで打ち立てた「ハーモニー・イニシアチブ」の中で目指している目標。