ニュースケール社、米国初のSMR製造でBWXテクノロジーズ社を選定
米オレゴン州のニュースケール社は9月25日、米国初となる同社製小型モジュール炉(SMR)の製造で設計等の作業を開始するため、バージニア州のBWXテクノロジーズ(BWXT)社を選定したと発表した。
ニュースケール社のSMRは、米原子力規制委員会(NRC)がSMR設計としては初の設計認証(DC)審査を2017年から進めており、2020年9月にも承認される見通し。同社製SMRの最初の顧客となるユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)もすでに2016年2月、米エネルギー省(DOE)からアイダホ国立研究所の敷地をSMR建設用地として使用する許可を得た。2020年代半ばまでに米国初のSMRを建設するというニュースケール社の計画は、着実に製造段階に移行しており、先進的な同技術の市場化に向けて大きく前進している
同社製のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール」は、電気出力6万kWのモジュール統合型PWRで、モジュールを12基連結することにより、出力を最大72万kWまで拡大できる。固有の安全性を有しているため、異常な状況下でも原子炉を自動停止し、人的介入や追加の注水、外部からの電力供給なしに無期限に冷却することが可能だとしている。
BWXT社の選定にあたりニュースケール社は、関心表明していた10か国の83社を18か月にわたって厳密に審査。同社の先駆的SMRを実現化する第一段階において、製造可能性や組立、輸送可能性といった側面で設計に磨きをかけるため、最良の企業を選定したと説明した。世界のSMR市場については、経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)が「2035年までに1,000億ドル以上の規模に成長する」と試算。ニュースケール社は、DC審査中SMRとしては同社製SMRが唯一のものであり、世界のSMR開発競争においても米国の最有力候補であるとの認識を示した。
同社は世界レベルのSMR商業化でロシアや中国などの国々と競合状態にあるが、米商務省によると米国企業が10億ドルの輸出を行う毎に、少なくとも5,000名分の雇用が確保されるという。その意味で、ニュースケール社製SMRの販売は、米国経済のみならず製造業の雇用に対しても、多大な経済効果が期待出来るとしている。
BWXT社は今後、ニュースケール社製SMRの製造第一段階における作業を直ちに開始し、2020年6月までこれを継続。その後の「製造準備段階」と「製造段階」においてもニュースケール社は、BWXT社と後日、契約を結ぶことになるとの見通しを述べた。同社はBWXT社について、米国政府や商業用原子力産業界の双方に原子力機器や燃料を供給しているリーディング・カンパニーだと認識。BWXT社としても今回のプロジェクトでは、高品質の特注機器製造企業であるプレシジョン・カスタム・コンポーネント社を機器製造に活用するとみられている。
【参照情報】ニュースケール社発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月26日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」、ほか。