英国の新型原子力技術政策、SMRなどを包括的設計審査の対象へ
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は11月7日、新型原子力技術政策に関する同省のウェブサイトを更新し、小型モジュール炉(SMR)と新型モジュール式原子炉(AMR)を同国の規制当局による包括的設計審査(GDA)の対象とする考えを明らかにした。
来年以降、これらの原子炉設計について審査申請書を受け付けるため、今年末までに「関心表明」の登録を産業界に求めていく。成熟度の高い小型炉設計に関しては年内にもGDAプロセスを始めたいとしており、BEISはその準備として、近いうちにGDAの申請や審査プロセスにおける要求事項を説明するためのワークショップを規制当局とともに開催する方針だ。
BEISは今年6月、国内民生用原子力部門との長期にわたる戦略的パートナーシップとなる「部門別協定」の内容を公表した。原子力が今後も技術革新や最先端技術を通じて、英国内に電力を供給し続けられるよう保証するのが目的で、国内エネルギー・ミックスを多様化するとともに、原子力発電コストを削減するため、産業界からの投資も含めて新たに2億ポンド(約293億円)を確保している。
具体的な目標としては、2030年までに新規建設プロジェクトのコストを30%削減するとしたほか、廃止措置経費を現在の見積額から20%節約、同じ年までに最大20億ポンド(約2,935億円)の契約を国内外から獲得できるよう国内供給チェーンの競争力を高める、などを設定。出力100万kW以下のSMRも含め、AMRを研究開発する2段階構成のプロジェクトに、英国政府は今後3年間で最大5,600万ポンド(約82億2,000万円)を投資するとしており、このうち最大400万ポンド(約5億8,715万円)が第1フェーズにおける実行可能性調査用、4,000万ポンド(約58億7,255万円)が第2フェーズの研究開発用となっている。
BEISによると、既存世代の原子力発電所の後に出現する新しい原子力技術の説明としては、一般的に理解されている「SMR」という表現では意味が狭すぎる。そのため、新型原子力技術は以下の2つのグループに分類されるとした。すなわち、
(1)水で冷却する方式の第3世代SMR:既存の原子力発電所と似たタイプの技術で出力が小さい、
(2)新たな冷却システムや燃料を使う第4世代以降の新型モジュール式原子炉:産業プロセス熱などの新機能を提供できるほか、コストの大幅な削減が可能――である。
これらのように多種多様な潜在能力を持った技術は、出力の規模により「超小型」や「小型」、「中型」の原子炉となる一方、技術のタイプによっては従来型の水で冷却する原子炉から、第4世代の原子炉まで幅が広がるとBEISは説明。このような広がりを背景に、英国政府はこれらを「新型原子力技術」として市場に出したいと考えている。
具体策として、英国政府と民生用原子力部門は共同で「先進的製造・建設プログラム」を起ち上げ、重要かつ価値の高い原子力機器やシステム、プロセスなどの設計方法を実証。このために、同部門に対する投資額から最大2,000万ポンド(約29億3,227万円)を融通するとしている。
今年に入り、BEISは新型原子力技術に関して、欧州原子力サミットや国際原子力機関(IAEA)総会のサイド・イベントなどで紹介した。今月5日と6日には、SMRとAMR関係で英国政府による初のイベントを主催しており、これらの設計の商業化に向けた重要見解を民生用原子力部門全体から聴取。この席上で、BEISのR.ハーリントン産業担当相が「部門別協定」における誓約として、SMRとAMRをGDAの対象とする方針を表明したもので、将来的にこれらを認可する能力が規制当局内に構築されるよう、最大700万ポンド(約10億2,752万円)が原子力規制庁(ONR)と環境省に提供されることになる。
(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)