IEAがWEO2018年版を公表:「エネルギー投資の7割以上が政府関係に」

2018年11月14日

 国際エネルギー機関(IEA)は11月13日、世界のエネルギー部門における2040年までの動向を検証した「ワールド・エナジー・アウトルック(WEO)2018年版」を公表した。
 不確実性が増大する中、世界中のエネルギー部門で大規模な変革が進んでおり、電化に向けた急速な動きは再生可能エネルギーの拡大や石油生産部門における大変動、天然ガス市場のグローバル化などを引き起こしているとIEAは指摘。WEOの最新版は、世界のエネルギー投資の70%以上を政府が主導することになるとした上で、「将来的に世界のエネルギー・システムがどのような形態になるかは、各国政府の決定や政策に委ねられている」と強調した。
 F.ビロル事務局長も「政府が適切な政策を策定して、適切なインセンティブを持つことは、エネルギーの供給保証やCO2の排出量削減、都市部における大気質の改善など、皆に共通する目標を達成する上で非常に重要になる」との見方を示している。

 WEOの編集にあたりIEAは毎回、各国政府が策定した既存の政策や実施予定の政策、持続可能な開発に向けた政策などを元にシナリオを作成。これらに基づいて、世界のエネルギー・ミックス像を長期的に予想している。
 原子力については、地理的に大きくシフトしながら穏やかに拡大していくと予測。現行政策からの変更がない場合、これまで市場を主導していた国、すなわち欧州各国や米国および日本においては、2040年までに設備容量が大幅に低下するため、これらの国の産業界は複数の課題に直面することになるとした。これに代わって、中国のように大規模な成長を遂げる国が台頭するとしており、10年以内に同国が設備容量で世界第一位になるとの見通しを明らかにしている。

 WEO最新版によると、地政学的ファクターがエネルギー市場に新たに複雑な影響力を及ぼしている時期は、エネルギー供給保証の決定的な重要性が明確に示される。地理的なエネルギー消費量は今も、アジア地域への大幅なシフトが続いているが、WEO最新版は変化の方向、スピードともに混ざり合ったシグナルが発せられているとした。
 例えば、原油は2020年初頭に市場が供給不足に陥る可能性があるなど、改めて不確実かつ不安定な時期に入りつつあると指摘。また、天然ガスについては中国が大量消費国として浮上しているため、供給過剰になる不安は払拭されているとした。さらに、低炭素エネルギー源の中では太陽光発電が突出して設備を増やしているものの、他の低炭素エネルギー技術については強力な後押しが今もなお必要、との認識を示している。
 これらのいかなる場合においても、各国政府は将来のエネルギー・システムが進む方向性に重要な影響力を及ぼすとIEAは明言。現在、計画されている政策を元にした「新たな政策シナリオ」では、2040年までに世界のエネルギー需要は25%以上増加する。このため、新たなエネルギー供給には年間2兆ドルを超える投資が必要だとしている。

         原子力発電設備の2つの方向性 ©IEAプレゼンテーション資料


 (参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)