フィンランド・オルキルオト3号機の運転開始は2020年に4か月先送り
フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は11月29日、オルキルオト原子力発電所で13年前から建設している3号機(OL3)(PWR、172万kW)の運転開始日程がさらに4か月先送りされ、2020年1月になったと発表した(=写真)。これは建設工事を請け負った仏アレバ社(当時)と独シーメンス社の企業連合が伝えたもの。現在の進行状況では送電網への初併入は2019年10月になる予定である。TVOの担当責任者は「これまで再三にわたって延期されてきた同炉の運転開始が改めて先送りされたことは、当然のことながら残念だが、重要なことは起動段階の作業すべてで妥協することなく最大限の注意を払うことだ」とした。最新設計の欧州加圧水型炉(EPR)を世界で初めて採用したOL3は、安全かつ近代的なプラントになるとした上で、運転段階への移行を心待ちにしていると述べた。
OL3の起動試験が日程通りに進んでいないことは、10月の段階ですでにTVOに伝えられており、企業連合側は完成スケジュールの再調整を行いたいとしていた。同企業連合は今年6月時点で、同炉の運転開始は2019年9月になると発表したが、最新日程では2019年6月に燃料の初装荷を実施し、同年10月に送電網に接続、2020年1月から定常的に発電を開始するとしている。起動試験のプログラムによると、同炉は初併入後から通常運転を開始するまでの試運転期間に、様々な出力レベルで合計20億~40億kWhの電力を発電する見通しである。
TVOによると、OL3で現在進行中の起動試験は、予想よりも長くかかると見込まれている。この試験に先立ち、昨年12月に始まった温態機能試験では、加圧器サージラインの振動という問題が発生し、今年5月末に同試験が完了するまで追加で50日間を要した。これまでに判明した事項に基づき、今後は電気系統と計測制御(I&C)系のアップデートで包括的な改修工事が行われる計画。加圧器サージラインの振動を抑えるため、配管の支持設備についても改修が必要だとした。これらの改修工事を完了した後、起動試験を改めて実施し、同炉の起動に備える方針である。
OL3が2005年8月に着工した当時の完成予定年は2009年で、TVOは約30億ユーロ(約3,874億円)の固定価格で企業連合側とターンキー契約を締結した。工事の遅延にともなう超過コストや損害賠償金については、今年3月に両者が和解契約を結んでおり、TVOは企業連合側から分割払いで合計4億5,000万ユーロ(約581億円)を受け取ることになっている。同契約ではまた、2019年末までにOL3を完成できなかった場合、企業連合側からさらに4億ユーロ(約516億円)を上限とする罰金がTVOに支払われることになる。
OL3の着工後、世界では後続のEPRとして、2007年12月に仏国でフラマンビル3号機(FL3)、2009年11月と2010年4月に中国で台山原子力発電所1、2号機がそれぞれ本格着工した。第3世代の最新設計であるが故に、FL3の建設工事はOL3と同様、様々な理由でスケジュールが遅延。2015年に原子炉容器パーツで鋼材組成の異常が認められたほか、今年2月には2次系配管の溶接部で「品質のバラツキ」が認められ、燃料の初装荷日程は2019年第4四半期に再設定されている。一方、中国の2基ではプロジェクトの初期段階で、これら2基の建設経験を踏まえた工事を実施。台山1号機は今年6月、EPRとしては世界で初めて送電を開始している。
(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)