ロシア:アルゼンチンの原子力平和利用に対する協力を強化
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は12月3日、原子力平和利用分野におけるアルゼンチンとの協力関係を強化するため、両国が1日付けで戦略的な協力合意文書に調印したと発表した。アルゼンチンでは現在、3基の加圧重水炉(PHWR)が稼働中だが、近年は軽水炉の導入計画も並行して進められており、第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)を同国6基目の商業炉として建設することになっている。今回の戦略的合意文書はこのような大型炉の建設計画を前進させるとともに、アルゼンチンで小規模の原子力発電所を建設するプロジェクトや、海上浮揚式原子力発電所で共同活動を取ることも考慮していくと明記。両国間の具体的な協力プロジェクトを実行に移す「協力ロードマップ」にも調印したことを明らかにしている。
戦略的合意文書への調印は、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)が11月30日からアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催されていたのに合わせ、ロシアのV.プーチン大統領とアルゼンチンのM.マクリ大統領立ち会いの下、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁とアルゼンチンのJ.イグアセル・エネルギー相が行った(=写真)。
リハチョフ総裁は今回の合意文書により、アルゼンチンとの既存の協力分野がさらに広がるとしたほか、ロスアトム社としても、原子力技術の平和利用協力で双方が恩恵を受けることになると確信すると述べた。また、相互協力を実施する基本的分野の1つとして、アルゼンチンで大型炉や小型炉を建設していく様々なプロジェクトについて、実行戦略を策定すると明言。世界の第三国で両国が共同プロジェクトを実施することも含まれるとしており、具体例として研究センターの建設や人的資源の開発などを挙げた。さらに同文書では、その他の数多くの分野で共同研究や人材訓練など、共同で活動していく機会が提示されることになるとした。
同文書ではこのほか、ロシアの設計技術で海上浮揚式原子力発電所を複数建設し、共同で操業する可能性があると指摘。その際には、世界初の海上浮揚式発電所としてロシアが最近完成させた「アカデミック・ロモノソフ号」をベースに検討を行うとしている。
2014年7月にアルゼンチン政府は、2012年末に満了したロシアとの二国間原子力協力協定に代わる新たな協定を同国と締結した。国内で4基目の商業炉となるアトーチャ3号機の入札では、ロスアトム社を含む合計5社が予備的有資格企業に認定されたが、アルゼンチン政府は2015年11月、中国核工業集団公司(CNNC)の投資支援により、4基目には70万~80万kWのPHWRを建設すると決定。同炉の建設に関する技術・商業契約をアルゼンチン国営原子力発電会社(NA-SA)がCNNCと結んだほか、5基目として軽水炉を導入する計画についても、CNNCが輸出用の第3世代設計と位置付ける100万kW級の「華龍一号」を採用するとし、同じ日に協力枠組協定を締結した。
国内6基目の原子炉を建設するための協力枠組については、アルゼンチン政府は2015年4月にロシア政府との了解覚書に調印している。その際、ロスアトム社傘下の国際事業部門ルスアトム・オーバーシーズ社が、NA-SAと「予備プロジェクト開発協定」を締結。6基目の設計・建設契約の調印に向けて、双方の協力範囲や権利と義務、財政面その他の条件を特定していた。
(参照資料:ロスアトム社とロシア大統領府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)