加テレストリアル社、溶融塩炉の機器設計でBWXT社と契約

2018年12月20日

IMSRの炉心ユニット©テレストリアル・エナジー社

 カナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社は12月18日、第4世代の革新的原子炉技術として開発している小型の一体型溶融塩炉(IMSR)について、機器の設計サービス契約をBWXT社のカナダ法人と締結したと発表した。
 テレストリアル社は、コストの点に加えて用途の多様性や機能性にも優れたIMSRの初号機を2020年代後半に起動させたい考えで、カナダでまず最初の商業用実証炉を建設した後、北米その他の市場で幅広く売り込む方針を2016年1月に公表した。今回の契約では、蒸気発生器(SG)や熱交換器、および発電システムに接続する機器の開発で、BWXT社から設計支援や技術コンサルティングを受ける計画。第4世代の小型原子炉技術は、社会を一変させるほど革新的なエネルギー・ソリューションであり、世界中で高まっているクリーンで低コスト、信頼性の高いエネルギーへの需要を満たすことができると強調している。

 溶融塩炉では燃料として、溶融塩にトリウムなどを混合した液体を使用。テレストリアル社のIMSRは、電気出力19万kW、熱出力40万kWの小型モジュール炉(SMR)になる予定で、同社は安全で信頼性の高い発電ソリューションとなるだけでなく、600度Cのプロセス熱を供給することも可能だとした。4年以内の建設が可能なため、先行投資額も10億ドル以下と調達し易い点が特長だとしている。
 商業用実証炉の建設地点については、カナダ・オンタリオ州にあるカナダ原子力研究所(CNL)のサイト内で特定するため、テレストリアル社は2017年6月からフィージビリティ・スタディを開始した。カナダの規制要件に対する予備的な適合性評価サービスも、国内の原子力安全委から2016年4月以降、受けており、すでに第1段階が完了。今年10月から第2段階の評価が始まっている。

 IMSRのポテンシャルには米国政府も期待を抱いており、テレストリアル社の米国法人(TEUSA)は2016年9月、先進的な原子力プロジェクトを対象とする米国政府の融資保証プログラムに申請するよう、米エネルギー省(DOE)から招聘を受けたと発表。初号機の主な建設候補地としては、DOE傘下のアイダホ国立研究所内が挙がっている。
 また昨年6月には、民間で開発が進められている先進的原子力技術の商業化を支援するため、DOEが設定したイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の支援対象にも選定された。TEUSA社はIMSRを将来的に米国市場で販売するため、2019年後半に設計認証(DC)審査を米原子力規制委員会(NRC)に申請する方針を2017年1月に伝えている。

 (参照資料:テレストリアル社、米エネ省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)