ヨルダン、ニュースケール社製SMRの建設で実行可能性調査
米オレゴン州を本拠地とするニュースケール社は1月15日、ヨルダンで同社製小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性を共同で調査(FS)するため、ヨルダン原子力委員会(JAEC)と了解覚書を結んだと発表した。
ニュースケール社製のSMRは、米原子力規制委員会(NRC)が現在、設計認証(DC)審査を進めている最初で唯一のSMR。2020年9月の審査完了が予想されるなど、米国のSMR技術としては商業化への動きが最も進んでおり、JAECのK.トゥカン委員長は「ヨルダンでの建設に向けて、その潜在的能力や実行可能性を評価するのが楽しみだ」と述べた。
JAECはヨルダンにおける原子力戦略の開発と実施を担当する政府機関であり、ヨルダン中央部におけるウラン鉱探査や未臨界集合体(JSA)の開発プロジェクトなどを監督中。FSの結果により、ニュースケール社製SMRの建設プロジェクトをヨルダン原子力発電開発計画の一部として進めるかについて、JAECが判断を下すことになる。
ヨルダンは中東に位置していながら石油資源に恵まれず、エネルギー資源の97%を輸入に依存している。原子力発電を導入することで、2020年代に国内の電力需要の12%を賄いつつ海水の脱塩にも利用する計画。2013年10月には、首都アンマンの東85km地点のアムラで100万kW級のロシア型PWR(VVER)を2基建設するため、発注先としてロシアのロスアトム社を選定した。
両国はその後、2015年に同国初となる原子力発電所の建設・運転計画についてプロジェクト開発協定や、その法的枠組となる2国間協定などに調印している。しかし、ロスアトム社は2018年5月、大型炉建設に関するこれまでの協力や調査結果に基づき、両国間の協力は今後、SMR分野に集中させることになったと発表。ロシア製SMRをヨルダンで建設するためのFSの共同実施で、JAECと合意したことを明らかにした。翌月になるとヨルダンの地元メディアは、大型炉の建設計画で資金調達交渉が上手くいかず、ヨルダン政府がこの件に関するロシアとの取引を破棄したことを伝えている。
ヨルダン政府は元々、大型炉の建設プロジェクトと並行して、海水脱塩や地域熱供給にも利用可能なSMRの導入可能性を検討中。2016年12月には、運転員の教育訓練を兼ねる多目的の韓国製「ヨルダン研究訓練炉(JRTR)(熱出力0.5万kW)」が、同国初の原子力設備としてヨルダン科学技術大学内で完成した。
2017年3月になると、JAECは韓国原子力研究所(KAERI)およびサウジアラビアの「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市公団(K.A .CARE)」の3者で、KAERIが中東向けに開発した小型炉「SMART(電気出力10万kW)」をヨルダン国内で2基建設することを想定したFSの実施で合意。11月にはJAECは、英ロールス・ロイス社と同社製SMRの建設に向け、FSを実施するための了解覚書を締結した。また、JAECは同じ月に、米国のX-エナジー社が開発している小型のペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100(電気出力7.6万kW)」についても、建設の可能性を検討する了解覚書に調印している。
(参照資料:ニュースケール社、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの1月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)