ロシアで建設中の多目的高速中性子研究炉、制御装置設置の第一段階が完了

2019年1月17日

©AEMテクノロジー社

 ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は1月16日、ウリヤノフスク州ディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所(RIAR)で建設中の「多目的高速中性子研究炉(MBIR)(熱出力15万kW)」で、制御装置設置作業の第1段階が完了したと発表した。

 MBIRは、1969年からRIAR内で稼働する高速実験炉「BOR-60(電気出力1.2万kW)」の後継炉と位置付けられ、複数の参加国が出資する「MBIR国際研究センター」の中核設備となる予定。国際原子力機関(IAEA)が設置した「革新的原子炉および燃料サイクル国際プロジェクト(INPRO)」の枠組内で開発することが2014年に決定しており、MBIRの中性子束/燃料チャンネルの40%をロスアトム社が所有する一方、残り60%を投資参加国で分担、使用料や原子炉の運転コストを年間参加費としてRIARに支払うことになっている。
 冷却材として、ナトリウムのほかに鉛や鉛ビスマスなど複数の重金属が利用可能で、燃料としてはウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料などを使用。2015年9月に本格着工した後、現在の日程では2024年に起動し、翌2025年に100%出力に達する見通しである。完成すれば、クローズド核燃料サイクルの確立に不可欠な高速炉開発や、原子力発電を長期的に利用していくための広範な研究課題の解決、新型核燃料の研究といった、文字通り多目的の利用が可能になる。

 MBIRの建設工事では、ロスアトム社の発電機器製造部門であるアトムエネルゴマシ社が主要機器の製造を担当している。同社のボルゴドンスク支部・AEMテクノロジー社は、支持構造物など総重量360トンを超える14機器を製造する予定で、今回の作業では、深さ20mの容器内に高さ10m以上、直径4mの制御ユニットを設置。これにより、MBIR内を出入りする冷却材の流れが制御・分離されるとした。
 次の作業としては防護ケーシングの組立作業などを予定しており、第2段階ですべての炉内機器が設置される。

 (参照資料:ロスアトム社、AEMテクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)