日立の計画凍結決定について英政府がコメント、夏までに新たな資金調達方法模索
日立製作所が英国でウィルヴァ・ニューウィッド原子力発電所(135万kWの英国版ABWR×2基)建設計画を凍結する判断を下したことを受けて、英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.クラーク大臣(=写真)は1月17日、議会下院で日立と英政府が合意に至らなかった理由について説明した。また、原子力発電所の新設計画を成功に導く新たな資金調達モデルに関して、遅くとも夏までに評価結果を公表する方針を明らかにしている。 同大臣はまず、エネルギー市場における経済性が近年、大幅に変化している点を指摘。最も少ないコストでCO2の排出量を抑えられるのは消費者にとって良いニュースだが、これに一層厳格な安全規制というファクターが加わると、原子力発電所の新設プロジェクトでは、その多くでコストが増大するとした。
同大臣は昨年6月に下院で、エネルギー源の多様化は最低限のコストでエネルギー供給を保証する最良の方法であると現政権は信じており、英国の将来のエネルギー・ミックスにおいて原子力が重要な役割を果たし続けるとしていた点を指摘。このため英政府としては、ウィルヴァ・ニューウィッド計画を支援する新たなアプローチを検討中であると昨年6月時点で明確に述べており、これには英政府による相当額の直接投資が盛り込まれる可能性があった。
英政府が提示した支援策は主に3点で、1つ目は日立および日本の政府機関、関連する戦略的パートナーによる投資とは別に、英政府によるプロジェクトの保有比率を3分の1とする用意があるとした点。2つ目では、建設工事の完了までに必要な負債金融をすべて、英政府が提供してもよいとした。3つ目としては、完成した発電所からの電力買取行使価格を、MWhあたり75ポンド(約1万600円)未満とする差金決済取引(CfD)に応じた点を挙げた。
これらは、歴代の英政府による支援案の中でも非常に手厚いものと同大臣は考えていたが、これに日本政府からの強力な支援が加わっても、日立としてはなお、同プロジェクトが商業的に非常に大きな困難をもたらすとの認識に至ったようだと述べた。同大臣によれば、英政府は原子力が今後も重要な役割を担うことを信じているが、そのためには納税者や顧客にとって価値の高いものである点を示さねばならず、今回提示した支援案は正当化が可能な限界点だったと指摘。他の電源でコストが低下している以上、行使価格を75ポンド以上に上げることはできないと説明した。
日立は今のところ、ウィルヴァとオールドベリーの両地点で新設プロジェクトを進める協議を英政府と続けたいとしているため、英政府としては日立や日本政府との連携を今後も継続して強化していくと同大臣は述べた。
これに加えて同大臣は、一層の競争激化が予想されるエネルギー市場で新規の原子力発電所が成功を収めるには、サイズウェルCやブラッドウェルBなど、後続の原子力発電所建設プロジェクトで資金調達が適切に行われるよう、新しいアプローチを考案する必要があると明言。このため、「規制資産ベース(RAB)モデル」の実行可能性について審査を進めており、遅くとも今年の夏までに評価結果を公表する方向で、議会に確認する考えを明らかにした。英政府ではこの夏、エネルギー白書の取りまとめを計画しており、この中に新たな資金調達アプローチが盛り込まれるとしている。
(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)