仏政府と原子力関係団体、4分野で戦略協定を締結

2019年1月30日

©仏政府

 仏国の環境連帯移行省は1月28日、国内の原子力産業界がハイリスク・ハイリターンなプロジェクトで成功を納められるよう支援するため、原子力関係企業や各種産業団体で構成される原子力産業戦略委員会(CSFN)と、4つの分野で戦略協定を締結したと発表した。

 環境連帯移行省はこの3日前、原子力発電シェアを2035年までに50%に削減することを目的としたエネルギー・温暖化防止戦略の基盤として、「エネルギー複数年計画(PPE)」案を公開協議に付したところ。今回の戦略協定は、同計画の課題に取り組む際、必要となる「可視性」を原子力部門にもたらすためのもので、仏政府はこの協定により、PPEが原子力産業分野で定めた方向性が一層具体的に定義されると指摘。原子力産業界が国家的ノウハウを温存するとともに技術力を維持するため、確固たる将来見通しを保証できるとしている。

 今回の協定には、環境連帯移行省のF.ド・リュジ大臣と経済・財務省のB.ル・メール大臣、およびCSFNのD.ミニエル会長が調印した(=写真)。発表によると、原子力産業界には現在、約2,600社の企業が含まれるが、その85%以上が中小企業。直接雇用と間接雇用の合計で約22万人規模となっており、500億ユーロ(約6兆2,500億円)という売上高のうち22%を輸出が占めている。

 仏国では全国産業評議会(CNI)が国家規模の産業戦略に関して政府に諮問を行うが、CNIが示した方向性に沿って原子力産業界は、数の限られたハイリスク・ハイリターン・プロジェクトに対して、具体的なアクション・プランを策定。これを今回、部門別協定の形で政府に提示したもので、実現に向けた双方の義務事項を取りまとめている。同プランは4つの分野で構成されており、それらは(1)雇用と能力・訓練、(2)原子力産業のデジタル改革、(3)研究開発と環境保護的方向への転換、(4)国際戦略--などだ。
 この中で、原子力産業界を競争力や魅力に富んだものとするには、原子力部門で専門的な能力や知見を維持・更新していく必要があり、それらは同部門における技術改革能力や将来性、持続可能性にとって重要な条件であるとした。また、最新のデジタル技術を供給チェーンや技術改革プロセスに活用していく方針であるほか、同部門内では特に、燃料サイクル分野で循環経済を推進する。
 さらに、フランス電力(EDF)が仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)やフラマトム社とともに起ち上げた「将来の原子力発電プラント・イニシアチブ」も加速し、仏国技術による小型モジュール炉(SMR)の開発を目指す。原子力部門でグローバル戦略を採用することも重要で、これにより市場や国際機関における仏国の地位を改善。国際市場のニーズに合わせた提案を行えるよう、調整していくとしている。

 (参照資料:仏政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)