テレストリアル社、溶融塩炉開発でオランダのペッテン炉を活用
カナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社は2月5日、独自に開発している小型モジュール式の一体型溶融塩炉(IMSR)(熱出力40万kW、電気出力19万kW)の材料試験を行うため、オランダ・ペッテンにある高中性子束炉(HFR)の利用契約を所有者の「原子力研究コンサルタント・グループ(NRG)」と締結したと発表した。 ペッテン炉は医療用放射性同位体(RI)の製造で知られているが、今回はIMSRの主要機器に使われる黒鉛を主に試験する計画。原子力技術研究の第一人者でもあるNRG社は、専門的な技術サービスをテレストリアル社に提供し、第4世代の原子炉となるIMSRの開発に必要な炉内物質の材料試験・開発を支援する。具体的には、材料試験の設計・準備や高中性子束による照射試験の試料、照射中および照射後の試験、試験を行った材料の評価などに関して、技術的な助言を行うとしている。
今回の契約ではまた、IMSRの材料試験プログラムを進めるのに加えて、テレストリアル社は欧州連合(EU)傘下の科学コミュニティとの連携強化を狙う。2018年3月に同社は、ドイツ・カールスルーエにあるECの共同研究センター(JRC)と技術サービス協定を締結。この協定では、IMSRの燃料および一次冷却材の確認試験が行われる予定であり、これらの協働作業を通じて、IMSRのエンジニアリングと規制関係プログラムを進展させたいとしている。
テレストリアル社は2016年1月、まずカナダでIMSRを建設した後、北米その他の市場に売り出す方針を公表。商業用初号機の建設地点をカナダ・オンタリオ州のカナダ原子力研究所(CNL)サイト内で特定するため、2017年6月からフィージビリティ・スタディを開始した。カナダの規制要件に対するカナダ原子力安全委員会の予備的な適合性評価においては、すでに第1段階が完了、2018年12月からは第2段階に入った。同月に同社は、IMSRの機器設計サービス契約をBWXT社のカナダ法人と締結している。
一方、同社の米国法人(TEUSA社)は2016年時点で、アイダホ国立研究所(INL)を始めとする最初のIMSR商業炉の建設候補地を米国内の4か所で検討。米国市場における同炉の販売を目的に、認可申請手続を開始する意向も2017年1月に米原子力規制委員会(NRC)に連絡しており、2019年後半に、設計認証(DC)審査の申請手続を行う方針を明らかにした。2018年3月には、ワシントン州の非営利電気事業者共同機関であるエナジー・ノースウェスト社と了解覚書を締結。INL内でIMSRを立地、建設・運転した場合の諸条件の取り決めなど、同研究所でサイト評価を共同実施するためのチームを結成している。
(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)