米エネ省の前長官ら、クリーン・エネルギーの技術改革促進を提唱

2019年2月14日

©E.モニッツ氏Twitter

 米エネルギー省(DOE)の前長官で、エネルギー関係の非営利団体「エネルギー・フューチャー・イニシアチブ(EFI)のCEOを務めるE.モニッツ氏(=写真)は2月7日、議会上院のエネルギー・天然資源委員会で、米国におけるエネルギー技術革新の現状と将来見通しを示した最新の研究報告書「クリーン・エネルギー技術革新の推進」を紹介した。
 同報告書は、著名な環境活動家であるM.シェレンバーガー氏が共同創設したブレイクスルー・インスティテュートの依頼により、EFIとコンサルティング企業のIHSマークイット社が共同で取りまとめたもの。IHS社のD.ヤーギン副会長はエネルギー問題に詳しい経済アナリストで、EFIのモニッツCEOとともに、クリーン・エネルギーの技術革新で米国がリーダー的立場を維持していくための方法を、関連する政策やプログラムなどから評価。先進的原子炉技術も含めて、100以上の最先端エネルギー技術を検証しており、基礎研究から商業規模の実証に至る技術革新の全段階において、官民の両部門で十分に的を絞った投資を増額する必要があるとの結果を明らかにした。
 また、米国は過去数十年間にわたってエネルギー技術革新の最前線に立ってきたが、その最も重要な理由は、一連の技術革新全体に沿って、基礎研究から開発に至るまでの、ユニークかつ広範な協力体勢があったからだと指摘。これには、連邦政府を始めとする多くの関係組織・機関が関わっており、このシステムが世界的規模の強みを長期的に米国に与えてきたのだと説明している。

 今回の報告書の中でEFIらは、「エネルギー技術革新こそ米国の安全保障とパワーの本質であり、技術革新を進展させる米国の能力は、経済的な成功と発展の中核部分となっている」と指摘した。技術革新によって、雇用の創出が促されるとともに国家の安全保障が強化され、複雑な社会問題への対処や米国民の生活の質向上にも役立っているとした。
 米国は過去70年にわたって、エネルギー技術革新の世界的リーダーであり続けているが、その中心的部分を担っているのは技術革新ビジネスに対する戦略的な取組み。このように前例のないビジネス生態系には、連邦政府や州政府、地方自治体のほかに、国立研究所、研究大学、民間部門、非営利組織などが関わっているが、世界の競争環境は今や、急速に変化しつつある。
 また、科学的に明解かつ厳然たるデータが揃っている以上、地球温暖化は人々の生活にとって大きな脅威であり、クリーン・エネルギーへの転換を余儀なくさせておきながら、温暖化という現実から目をそらしている国々は、いずれ取り残されていくとの見解を示している。

 「先進的原子力技術」は、温暖化への取組みで潜在的に突破口となり得る23の候補技術を、さらに絞り込んだ5つのうちの1つ。具体的には「無炭素電源としての新型炉と小型モジュール炉(SMR)、および産業プロセス熱」と定義しており、原子力はCO2を排出しない大規模電源であるとともに、クリーン・エネルギーが産業面のバリュー・チェーンとなるよう支えているとした。
 選定基準には、(1)技術的メリット、(2)市場で生き残れる可能性、(3)他のエネルギー・システムとの互換性、(4)消費者にとっての価値、の4ステップが適用された。新型炉とSMRの技術的メリットとしては、クリーンな電力を送電網や産業に供給する新たなルートになるとともに、熱電併給可能な点などが評価された。市場での可能性については、SMRであれば財政面や適用面で市場力学を変えることができるとしている。

 原子力に関してEFIらは、「非常に高い稼働率と信頼性というファクターは、既存の原子力発電所にとって大きな宝である」と評価。ただし、安全性やコストの問題、核の拡散、環境面での懸念もまた、今後解決して行かねばならない。影響の大きさという点から、世界では原子力発電所の新設は、化石燃料発電所の閉鎖に合わせて必要になっていくとの認識を示している。
 原子力発電が進化していく道筋として、EFIらはまず、既存の軽水炉が2020年から2035年にかけて、軽水炉方式のSMRに発展していくと予測。2025年以降2030年頃には、冷却材として水のほかに溶融塩、液体金属、ガスを用いた新型炉になるとした。これらは、運転員が不在であっても安全性が保たれるという性質を持つほか、燃料としては濃縮ウランに加えて、劣化ウラン、使用済燃料などが利用可能になるとの見方を示している。

 (参照資料:EFIの発表資料、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)