WANOが上海に支援センター設置へ

2019年2月25日

 世界原子力発電事業者協会(WANO)は2月22日の臨時総会で、中国の上海に新たな支部を置くことを決定したと発表した。同支部はロンドン調整センターによる管理の下、支援センターに移行していく計画だが、今後開催される臨時総会での表決いかんでは、本格的な地域センターに昇格する可能性があるとしている。

 WANOはチェルノブイリ事故後の1989年、世界30か国以上の国と地域で約460基の商業炉を運転する事業者が、安全性と信頼性の改善支援を行うために設立された非営利の国際組織。理事会の事務局として「調整センター」が英国ロンドンとその支所が香港に置かれているほか、「地域センター」が米国のアトランタ、ロシアのモスクワ、仏国のパリ、および東京の4か所に設置されている。
 上海に支部を置くという決定は、世界で建設中の商業炉の約3分の2が位置するなど、同国を含めたアジア地域全体で、原子力発電所の劇的な開発成長に応えるというWANOの戦略に基づいている。中国の商業用原子力発電設備容量は今や、米国、仏国に次いで世界第3位に躍進。上海のセンターを通じて、WANOは世界最速の商業炉開発地域の事業者に対し、建設段階から安全性と信頼性の高い原子力発電所に移行する際の、様々なサービスを一層容易に提供できるとしている。

 WANOのP.プロゼスキーCEOは、上海支部の設置が表決されたことを歓迎。過去30年以上が経過するなかで、中国は商業用原子力部門の中心的存在になったとしており、WANOが支援するメンバー企業が中国で増加したことは喜ばしいことだと述べた。
 上海センターへ移行するにあたって、WANOは3段階の開発モデルを策定している。まず、(1)ロンドン調整センターによる監督管理の下で、約40名のスタッフを擁する上海支部を設置。(2)同支部はその後、支援センターに移行していくが、監督管理は引き続きロンドン・センターが行う。(3)最終段階として、WANOは改めて臨時総会を開催し、本格的な地域センターとするかという点について表決することになる。

 WANOでは現時点で、中国核工業集団公司(CNNC)とその傘下の秦山核電公司、福建福清核電公司、三門核電公司などがWANO東京センターに所属している。一方、中国広核集団有限公司(CGN)と傘下の陽江核電公司、台山核電合営公司、福建寧徳核電公司などはパリ・センターのメンバー。このほか、国家電力投資集団公司(SPIC)および同公司が出資する海陽山東核電公司、中国5大電力の1つである中国華能集団などはアトランタ・センターの所属となっている。

 (参照資料:WANOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)