英政府、新規原子炉の運開までは電力輸入量が増加すると予測
英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が1月末に公表した「国家エネルギー・気候変動計画(NECP)案」の中で、「2030年代に新たな原子炉が運転開始するまでは、英国が欧州大陸から輸入する電力量は増加する」と予測していたことが明らかになった。
英国では1990年から2015年までの間、エネルギー供給部門からの温室効果ガス(GHG)排出量が48%低減した。これは主に、石炭火力からガス火力に、あるいは風力や太陽光といった再生可能エネルギーへのシフトが進んだことによるもので、2017年は原子力による発電シェア20.8%も含めて、低炭素電源からの電力供給量が50%を超えている。
こうしたことから、英国政府は同部門によるGHG排出量が、2020年までに1990年のレベルから69%低減するとしたほか、2030年には73%低減すると予測。2016年に石炭火力のシェアが急減したのに続き、2035年までに化石燃料のシェアはさらに、徐々に低下していくとした。これに代わって、再生可能エネルギーや原子力による供給電力が一層増加すると指摘。同時に欧州大陸との国際送電網を経由した輸入電力量も増えていくが、それは2030年代に新規の原子力発電設備によって、輸入の必要性がなくなるまでの期間だとしている。
NECPは、2018年に欧州委員会(EC)が打ち出した8つのクリーン・エネルギー政策法案パッケージ「すべての欧州市民にクリーン・エネルギーを」に基づき、加盟各国が策定を義務付けられたクリーン・エネルギー計画の枠組。EUエネルギー同盟の5つの特質をカバーする内容であるため、8法案の中でも「(EUエネルギー同盟の)ガバナンス規制」に含まれているが、この規制はエネルギー・気候変動に関する異なるEU規制の中で、個々に存在する計画立案義務やモニタリング義務、報告義務などを1つに統合するためのものである。
加盟各国は10年毎にNECPを取りまとめることになっており、気候変動とエネルギーに関する各国の目標や政策、方策などが盛り込まれる。最初の対象期間である2021年から2030年までのNECPでは、GHGの排出量削減や再生可能エネルギーの比率、エネルギー効率、電力網の相互接続などについて、2030年時点のEU目標の達成を確実にしなければならないとしている。
英国は今年3月末にEUから離脱する予定になっているが、歴史上の新たな局面を迎えるにあたり、EUとの意欲的な経済連携を目指した提案を策定。エネルギーに関しては、クリーンでコスト面での効率性が高く、確実な電力とガスの供給を下支えできるようなEUとの協力関係を模索する方針である。
また、NECPの中でBEISは、エネルギー技術革新プログラムに5億500万ポンド(約739億円)を充当。革新的なクリーン・エネルギー技術の商業化を加速するため、割当項目の中では最大の1億8,000万ポンド(約263億円)を原子力の技術革新に対して計上している。
(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)