ビル・ゲイツ氏、10のブレークスルー技術の1つに新型原子炉技術 選択
マイクロソフト社の創業者として知られるビル・ゲイツ氏は2月27日、MITテクノロジー・レビュー誌(3/4月号)のコラム「2019年版・10のブレークスルー技術」に登場し(=写真)、「我々はいかにして未来を生み出すのか」と題する文章を掲載。「先進的な核分裂炉や核融合炉は、炭素を出さずに安全・確実なエネルギーを世界中に供給できる」との見解を表明している。
同氏は、地球温暖化を防止する取組みの中で原子力は理想的だと主張しており、同氏が出資する原子力開発ベンチャー企業の米テラパワー社は、第4世代の原子炉技術といわれる「進行波炉(TWR)」を開発中。
今年の「ブレークスルー技術」のリストでは、世間を騒がせるような技術を選び出すだけでなく、技術史上におけるこの瞬間を、技術革新が長時間かけてどのように発展してきたか自ら考える時間として捉えたいと説明。「原子力発電における新たな波」は、「器用なロボット」に次いで2番目に取り上げている。
同氏はまず、先進的な核分裂炉と核融合炉の技術が少しずつ、実現に近づいて来ていると指摘。2018年に開発作業が本格化した新しい原子炉設計は、原子力発電が一層安全かつ安価な電源になることを約束していると述べた。その中でも、第4世代の核分裂炉は伝統的な原子炉設計を進化させたもの。このほか、小型モジュール炉(SMR)や、永遠に手の届かない技術と見られていた核融合炉が挙げられるとした。
第4世代炉の開発業者としては、カナダを本拠地とするテレストリアル社や、ゲイツ氏が出資するワシントン州のテラパワー社などがあり、2020年代の送電開始を目指して電気事業者と研究開発パートナーシップを構築している。また、伝統的な商業炉が約100万kWを発電するのと比べ、SMRが通常、発電するのは数万kW程度だが、ゲイツ氏は、オレゴン州でSMRを開発中のニュースケール社が「小型炉であれば初期投資を抑えることができ、環境と財政両面のリスクを減じることが可能」と述べた点にも言及している。
同氏はさらに関連情報として、最新式で安全性が一層高い原子炉は地球温暖化を食い止めることに貢献すると指摘。新しい世代のプロジェクトとして、ナトリウム冷却方式の核分裂炉から新型の核融合炉に移行することにより、原子力に対する信頼性を取り戻すことが期待できるとした。
実際、核融合開発計画は大きく進展中であり、2030年までの送電開始は無理だとしても、ジェネラル・フュージョン社やゲイツ氏が出資するコモンウェルス・フュージョン・システムズ社などは、計画をある程度、前進させられると同氏は明言。多くの人が「核融合は幻想だ」と考えていたが、核融合炉がメルトダウンを起こすことはなく、長寿命の高レベル放射性廃棄物を発生させることもない。従来型の原子力発電所よりも、一般市民による反対はずっと少なくなるべきだと訴えている。
(参照資料:MITテクノロジー・レビュー誌の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)