米ミルストン原子力発電所が売電契約、2023年の早期閉鎖回避へ

2019年3月22日

ミルストン発電所2、3号機
©ドミニオン社

 米コネチカット州のN.ラモント知事、および同州エネルギー環境防護省(DEEP)のK.ダイクス・コミッショナーは3月15日、同州でミルストン原子力発電所(90万kW級と120万kW級のPWR、各1基)(=写真)を操業するドミニオン・エナジー社が、州内2つの配電会社と同発電所による発電電力の売買契約で合意に至ったと発表した。

 この契約により同発電所は、年間90億kWhの無炭素電力を今後10年間にわたり2社に供給。DEEPなど州政府の担当機関は、早ければ2023年にも同発電所が早期閉鎖のリスクにさらされると見ていたが、配電会社との長期契約が結ばれたことで、ドミニオン社は同発電所が州内のCO2排出量削減目標達成に寄与するのみならず、州内で顧客が支払う電気料金の大幅な削減や高賃金の雇用の確保、州政府および関係自治体の経済にも大きく貢献するとしている。
 これにともない、同州が所属する北東部ニューイングランド地方6州の州知事は、同じ日に連名で声明文を発表。地元州のエネルギー供給保証や冬季の電力供給における既存原子力発電所の貢献度を高く評価するとともに、その維持を可能にするような市場原理に基づくメカニズムを、ニューイングランド地方の独立系統運用者(ISO)らと協力して検討していきたいとしている。

 コネチカット州では2017年10月、州内の原子力発電所に対する財政支援措置を盛り込んだ「ゼロ炭素電力の調達に関する法案(SB1501号)」が成立した。この段階でドミニオン社は、州内唯一の原子力発電設備であるミルストン発電所が、支援を必要としていることを裏付ける詳細な財政文書を提出していなかった。しかし、同州のDEEPと公共事業規制局(PURA)はその後、「同発電所の2基は早期閉鎖のリスクにさらされている」と認定。これを受けて、同州のD.マロイ知事(当時)は2018年12月末、同発電所を支援措置法の下で保全する無炭素電源の1つに選定した。
 これは、ドミニオン社が同発電所関係で提示していた発電量や期間の異なる24の入札のうち、全発電量の約50%を10年にわたって販売するという入札を、太陽光や風力関係の入札とともにゼロ炭素電源として指定したもの。州知事は発表文の中で、同発電所がコネチカット州経済にとって、信頼性と効率性の高い無炭素電力を生み出す極めて重要なベースロード電源であると指摘した。また、電力の売買契約で交渉中だった配電会社2社に対しては、同発電所がリスクに陥る期間とされた2022年~2029年について、DEEPが「所有者であるドミニオン社にとって、妥当な収益率が一層的確に反映されるような価格で交渉すること」を命じていた。

 今回の発表文の中では、ラモント州知事が「もしもミルストン発電所が閉鎖されれば、同州とニューイングランド地方は悲惨なことになる」と明言。CO2排出量が25%近く増加するだけでなく、輪番停電のリスクが拡大、電力の代替コストとして数十億ドルが必要になり、1,500名分以上の雇用が失われるとした。配電会社との取引によって、ミルストン発電所の無炭素電力は10年にわたって確保され、消費者が支払うコストも削減される点を強調している。

 ニューイングランド地方6州(コネチカット、メーン、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ロードアイランド、バーモント)による共同声明文でも、知事らはまず、同地方で信頼性が高く適正価格の電力を供給し続けられるようなエネルギー・システムを確保していくと表明。このような共通目標を達成するため、6州が州境を越えた協力活動を推し進めていくことを再確認した。

 (参照資料:コネチカット州政府ドミニオン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)