カナダで初めて、SMRの「サイト準備許可」申請
カナダのエネルギー関係プロジェクト開発企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社は4月2日、パートナー企業が開発した小型モジュール炉(SMR)「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を、オンタリオ州のカナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトで建設するため、「サイト準備許可(LTPS)」を3月20日付けでカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請したと発表した。
カナダにおけるSMR開発プロジェクトで、規制上の申請が行われたのは初めてのこと。同社は、CNLが2018年4月に公表した「CNL管理サイトにおけるSMR実証炉の建設・運転提案の募集」に応募しており、今年2月には4段階で構成されるCNLの審査で唯一、 フェーズ3に進んでいた。
GFP社によると、LTPSで申請が行われたことは重要な節目である一方、CNLの募集に対する応募者の選定プロセスも進行中であり、今後は一般国民や先住民を交えた環境影響評価を完了しなければならない。また、その後はCNSCからSMRの建設・運転許可を取得する必要があるとしている。
MMRは、米ワシントン州を本拠地とするウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発したもので、熱出力1.5万kW、電気出力は0.5万kW。シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン粒子を燃料として用いる第4世代の小型モジュール式高温ガス炉で、20年の運転期間中に燃料交換を行う必要が無い。いかなる事故シナリオにおいても、物理的対応の必要なくすべての熱が受動的に環境中に放出されるなど、メルトダウンが発生する心配もない。運転員が持ち場を離れた場合でも安全性が保たれるという。
SMRはまた、温室効果ガスを排出しないため、化石燃料発電に代わる有用オプションと位置付けられており、GFP社は環境面と地球温暖化防止の両面からカナダの目標達成に貢献すると指摘。MMRの技術であれば、送電網との接続がない遠隔地の鉱山設備や北部の先住民コミュニティにも低炭素なエネルギーと熱を提供することができ、SMRをカナダで開発する際の将来モデルになるとした。
GFP社とUSNC社の支援企業として、MMRプロジェクトに参加中のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、「当社にとってSMRは革新的技術で成長するための好機だ」と述べ、同社がカナダ国内で保有している18基の原子炉など、既存のクリーン・エネルギー・ポートフォリオにもSMRは適合するとの認識を示している。
(参照資料:GFP社、USNC社、OPG社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、および4月2日付けWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)