WNAが2019年の原子炉動向とりまとめ:「閉鎖基数が新規運開を上回る」
ロンドンを拠点とする世界原子力協会(WNA)は1月3日、2019年末現在の世界の原子炉開発動向を取りまとめて発表した。この時点で稼働可能な原子力発電設備容量は1年前より低下して442基、3億9,240万kWになったほか、昨年中に永久閉鎖された原子炉基数が新規の運転開始基数を上回ったことなどを明らかにしている。
発表によると、世界では2019年に6基、524.1万kWが新たに運転を開始しており、内訳は中国の台山2号機と陽江6号機、韓国の新古里4号機、およびロシアのノボボロネジII-2号機と海上浮揚式原子力発電所の「アカデミック・ロモノソフ号」(出力3.2万kWの小型炉2基を搭載)である。
これらの原子炉の多くが第3世代の原子炉技術を採用しており、台山2号機は、2018年12月に世界初のフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)として営業運転を開始した同発電所1号機に続くもの。新古里4号機は韓国がアラブ首長国連邦(UAE)に輸出した140万kWの「APR1400」と同型で、韓国国内では2基目の運転開始となった。ロシアのノボボロネジII-2号機は同国が開発した最新鋭の120万kW級ロシア型PWR(VVER)「AES-2006」設計であり、運転開始した同型設計炉としては世界で3基目。「アカデミック・ロモノソフ号」についてはロシア国営原子力企業のロスアトム社が、「世界に先駆けての小型モジュール炉(SMR)技術に基づく原子力発電所」と強調している。
一方、昨年1年間に世界で正式に閉鎖された原子炉は9基、597.6万kWにのぼったとWNAは指摘。内訳はロシアのビリビノ1号機、台湾の金山2号機、日本の玄海2号機、スイスのミューレベルク発電所、ドイツのフィリップスブルク2号機、スウェーデンのリングハルス2号機、米国のピルグリム発電所とスリー・マイル・アイランド1号機、および韓国の月城1号機となった。月城1号機はすでに、2018年6月から営業運転を停止していたが、正式な閉鎖決定は2019年12月24日付けで発表された。
このほか、2019年中に新たに着工した原子炉建設プロジェクトとして、WMAはロシアのクルスクII-2号機とイランのブシェール2号機、および中国の漳州1号機を挙げた。クルスクII-2号機とブシェール2号機はいずれも、ロスアトム社とその傘下企業が建設工事を請け負っており、ブシェール2号機には第3世代+(プラス)のVVER「AES-92」設計を採用。また、クルスクII-2号機については、「AES-2006」設計をベースに技術面や経済面でパラメーターを最適化したという「VVER-TOI」が世界で初めて採用された。
昨年10月に着工された漳州1号機については、中国核工業集団公司(CNNC)と中国広核集団有限公司(CGN)の第3世代設計を融合させた「華龍一号」設計が使われている。これらによって、世界で建設中の原子炉は54基、5,990万kWになったとWNAは説明している。
(参照資料:WNAの1月3日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」、原産新聞・海外ニュース、ほか)