韓国とサウジ、SMART炉の建設・輸出促進で「建設前設計契約」を改定

2020年1月8日

 韓国の科学技術情報通信部(MSIT)は1月3日、サウジアラビアで韓国製小型モジュール炉(SMR)「SMART」を建設する計画や同設計の共同輸出を促進するため、2015年9月に両国の担当機関が締結した「SMART炉の建設前設計(PPE)協力契約」を改定したほか、新たに「韓国-サウジアラビア・標準設計認可取得の共同推進協約」を締結したと発表した。
 これらによって具体的に、韓国水力・原子力会社(KHNP)を始めとする韓国企業、およびサウジ企業が参加するSMART炉の建設・輸出担当特別合弁企業「SMART EPC社(仮称)」の設立と、同社におけるKHNP社の役割が明文化された。KHNP社はSMART EPC社が設立されるまで同プロジェクトを主導し、サウジ国内の標準設計認可をSMART炉で取得するとともに、ビジネス・モデルの設定や建設インフラの構築、第3国へのSMART炉輸出のための協議を進めていく。

 SMART炉は海水脱塩と熱電併給が可能なシステム一体型モジュラーPWRで、熱出力と電気出力はそれぞれ33万kWと10万kW。韓国原子力研究院(KAERI)が中東諸国等の需要も想定して開発したSMRで、韓国とサウジアラビアは2015年に同炉のPPE協力契約を締結した後、韓国側が0.3億ドル、サウジ側が1億ドルを投資して、同年12月から2018年11月までSMART炉の設計をPPE事業として共同実施。これには原子力関係の研究者に加えて、韓国側から韓国電力技術(KOPEC)、 韓電原子力燃料(KNFC)、斗山重工業、鉄鋼大手のポスコ社などが参加した。

 今回の発表によると、SMART炉事業へのKHNP社の参加は、同設計の初号機建設事業におけるリスクを軽減するためサウジアラビア側から要請されたもので、原子力発電所の建設と運転におけるKHNP社の豊富な経験が買われたという。また、「標準設計認可取得の共同推進協約」は、建設許可審査におけるサウジ側の負担軽減と第3国へのSMART炉輸出の促進を目的としており、この作業でKHNP社やKAERI、サウジ側の担当機関「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市公団(K.A.CARE)」それぞれが果たす役務範囲や財源分担案などが盛り込まれた。
 MSITはこれらにより、両国がSMART炉の許認可段階から建設、インフラ構築など、原子力発電全般にわたって協力していく基礎が築かれたと指摘。両国のSMART炉事業推進に一層の弾みが付くと強調した。サウジ側も、同炉の標準設計認可取得や国内の初号機建設を通じて技術やノウハウを蓄積し、同国が原子力発電技術で自立するための大きな資産として活用できると期待している。

 (参照資料:MSIT(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月7日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)