ロシア:「ブレークスルー計画」で高速炉用ウラン・プルトニウム混合窒化物燃料の試験体 完成
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社の傘下企業で燃料製造を専門とするTVEL社は1月20日、子会社であるシベリア化学コンビナート(SCC)の化学・冶金プラントで、鉛冷却高速炉(LFR)用ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料の新しい試験燃料集合体が完成し、受け入れ試験が完了したと発表した。試験燃料を使って製造した燃料棒4本が、それぞれ試験燃料集合体に組み込まれたもので、今後は原子炉試験を実施するため、今年の第1四半期中に複数の高速炉が稼働するベロヤルスク原子力発電所に移送するとしている。 発表によると、これらの試験燃料(ETVS-22、ETVS-23、ETVS-24)は実際の操業時に近い条件下で製造されている。核燃料サイクルの確立に向け、実績豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加えてLFRの研究開発も並行して実施するという「ブレークスルー(PRORYV)プロジェクト」の一環として開発されたもので、2011年に始まった同プロジェクトでは、「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」として電気出力30万kWのLFRパイロット実証炉「BREST-300」をSCC内で建設するほか、同炉用のMNUP燃料製造加工モジュールと専用の使用済燃料再処理モジュールも併設予定。
今回完成した燃料の技術は、燃料製造加工モジュールで活用されることになる。ロスアトム社はまた、PDEC建設の第2段階として「BREST-300」を2026年末までに完成させるため、昨年12月に総額263億ルーブル(約465億円)の総合建設契約をTITAN-2社と締結している。
「BREST-300」用試験燃料集合体の原子炉試験は、すでに出力60万kWのベロヤルスク3号機(BN-600)で始まっており、今回完成した燃料の原子炉試験はこれに続いて行われる。
燃料の受け入れに関する専門委員会では、TVEL社の代表のほかにロシア無機材料研究所(VNIINM)、エネルギー技術研究所(NIKIET)、実機機械製造設計局(OKBM Africantov)などの専門家が出席。これらの委員は最新のMNUP試験燃料集合体について、定性的・定量的な特性や溶接部の品質、設計文書との適合性、燃料集合体としての構造や表面部分に放射能汚染がないか、等をチェックし、これらが技術文書と設計文書の要件を完全に遵守していることを確認した。
(参照資料:TVEL社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月22日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)