vol07.再生可能エネルギー拡大の影響は一国にとどまらない
4周辺国との卸電力取引
(1) 電力輸出入の変化
ドイツはフランス、オランダをはじめ多くの国と国境を接し、電力の輸出入を行っている。ENTSO-Eのデータでは2014年のドイツの総電力輸入量は389億kWh、総電力輸出量は746億kWh となっており、輸出が輸入を大きく上回っている。2014年の輸出入の相手国別では、フランス、チェコの順に電力の輸入超過、オランダ、ポーランド、オーストリアの順で輸出超過となっている。
欧州では統計で把握されているような隣接する二国間の輸出入以外に、第三国とのやり取りも活発である。例えば、国内の電力価格が高いオランダは、近年ドイツからの輸入を増加しているが、ドイツ・エネルギー・水道連盟(BDEW) は、オランダへ輸出される電力の中には、オランダを経由し海底ケーブルを通じて英国やノルウェーの第三国へ流れる電力が含まれる可能性に留意する必要があると指摘している(BDEW,”Auswirkungen des Moratoriums auf die Stromwirtschaft”, 2011年5月)。電力系統が国家をまたいで連系している欧州では、電力の国家間のやり取りは、統計などで計測される二国間のやり取り以上に複雑な部分がある。
ドイツの電力輸出入量の推移については、2003年以降は輸入量が400億kWh 前後で推移しているのに対して、輸出量は2005年に600億kWh 前後まで増加した後、2009年のリーマン・ショックにより落ち込んだ。その後、2011年から3年連続で輸出量が増加し、2014年には746億kWh となった。輸出量の拡大に伴って2003年には67 億kWh であった純輸出が、2014年には360億kWh まで拡大している。
相手国別の輸出入量の変化としては、チェコとの間では輸入の縮小と輸出の拡大により純輸出が大幅に縮小している点、オランダとの間では輸出が2009年頃に一旦落ち込んだものの2012年以降大幅に増加している点が挙げられる。
近年、ドイツ国内の電力消費量は減少傾向にあるが、発電電力量はほぼ横ばいとなっている。このため、電力の需給バランスから純輸出が拡大する傾向にあり、特に再生可能エネルギーの導入拡大と輸出の拡大の関係が指摘されている。
(2)再生可能エネルギー発電と電力輸出入
ドイツでは、特に2012年以降において電力の輸出超過量が拡大している。輸出超過拡大の背景には、ドイツ国内の卸電力の価格が周辺諸国よりも低いこと、および国内需要に対して供給能力が大きいことが挙げられる。この要因として政策支援を受けた再生可能エネルギーの急速な拡大、および省エネ等の電力利用効率化による国内の電力需要の低下が指摘される。