新年号特集から その3 着実な拡大見込まれる原子力発電
◇着実な原子力発電の拡大を見通す
昨年11月に国際エネルギー機関(IEA)が示した長期的な世界のエネルギー動向では2040年まで中国、韓国、インド、ロシアの4か国を中心に世界の原子力設備は6割増加する等の見通しを示している。
◇中国、インド、ロシアを中心に開発進行
中長期的にみて、原子力発電の活用は堅調に拡大する情勢で、とくに中国、インドなどアジア地域を中心に、高成長する経済を支えるため原子力発電の導入拡大が見込まれる。福島第一の事故後に安全計画を見直し原子力発電の推進に舵を切った中国は2014年11月に2020年までのエネルギー開発計画をまとめ、20年に運転中の原子力発電所を5800万kWとする青写真を描いた。国産炉開発の促進で輸出展開も視野に入れた動きを見せている。
インドも軽水炉の導入拡大を積極的に進めており、海外からの導入計画を複数進めていて、2032年までに4000万kW規模とする意欲的な計画が進展中となっている。
◇英国や東欧諸国で動き
加えて、ウクライナ情勢の緊迫化により、東欧など欧州で予定している原子力発電所の新設計画を具体的に前に進める動きがみられる。
エネルギー安全保障の観点から、中長期的な視点で複数の原子力発電新設計画を進める英国の動きも、2015年を通じて注目点のひとつといえるだろう。
トルコやUAEといった新規導入を計画する国々も、インフラ整備を含めて計画を着実に進める見込みとなっており、目が離せない。
昨年、日本原子力産業協会が集計したところでは、世界的に原子力発電の新規導入を計画あるいは検討中の国は33か国にのぼる。
◇世界的に裾野広げる原子力発電の活用
一方で、段階的な廃止を進める政策をとる国はドイツ、スイス等欧州の4か国。世界を俯瞰すれば、最新の安全水準を有する安定電源として原子力発電を活用しようとする流れにあり、選択肢から敢て除外する動きは一部にとどまっている。
日本では、エネルギーミックスの議論が今月から開始されるが、重要なのは長期に安定したエネルギー供給基盤の確保であり、エネルギー安全保障の観点から、原子力発電の役割を幅広い視野で議論、位置付ける必要がある。
(1月7日付け号掲載)
なお、原産協会がまとめている海外の原子力動向については、こちらのページから。