曽田鉄工有限会社 「創意工夫の精神で地域とともに発展していく会社に」
曽田鉄工は1977年の創業以来、大型プラントに必要な設備や治具などの設計・製作を行ってきた。将来のものづくりを担っていく人材の育成や地域社会との共生にも熱心に取り組んでいる同社の曽田直秀代表取締役に話を伺った。(中村真紀子記者)
<顧客の要望に合わせた提案で様々な製品に対応>
弊社では、鉄・ステンレス・アルミなどの板や鋼材を扱い、切断、曲げ(折り・ロール)、溶接などの加工を施し、手のひらサイズからトレーラーに積むような大型のものまで幅広い製品を製作しており、顧客から図面をいただいて製作することも、自社で設計する場合もある。
これまで納品してきた製品としては、プラントなどで使われる熱交換器、排気筒のダクトやタンク、吊具、台車などがある。また、湖底に酸素を送り活性化させるような水質改善機器や、製塩用の塩釜など、特殊な用途に使われるものも製作してきた。工業用品以外の分野では、島根大学の実験用水槽や、米子高専の文化祭イベント用地震体験装置も製作している。
装置関係は顧客から図面をいただき製作することになるが、いかに正確に顧客の要望に合わせたものが作れるかが弊社の力の見せ所となる。顧客の要望を把握した上で、「弊社の技術でこういう形なら作れる」「こういう方法はどうか」と提案しながら製品にしていく。
作業を効率的かつ安全に行っていくため、工場内にレーザースキャナとプラズマ加工機を導入した。レーザースキャナは空間を測ることができるので、高所に上る必要がなく、データさえ取れば事務所で作業できる。プラズマ加工機も材料を載せるだけで高速かつ安全に切断ができる。
<安全で効率の良い作業が行える治具を製作>
原子力発電所に関係する分野では、これまで島根原子力発電所に台車や排気ダクト、連絡通路や点検架台などを納入している。プラントの中は定期的に設備の更新や点検がある。その時に安全に効率よく作業できるよう顧客と一緒に考えながら、治具を提案し製作している。
例えば、以前は上方での作業と下方での作業のいずれか一方しか行えなかったところを、並行して一台でこなせるような治具を製作したことで、高所作業がなくなり安全性が向上して、工期も予定より短縮できた。また、原子力発電所の放射線管理区域内ではなるべく作業時間を少なくすることが望ましく、有効に利用していただいている。
また、多くの人力が必要だった重量のあるホース運搬作業を、2名いれば引っ張ることができる治具も製作した。福島第一原子力発電所事故のようにすべての電源が失われてしまった時には、いかに早く冷却水を確保できるかが大事だが、弊社もこうした工夫で貢献できる。この治具はホースの出しやすさとともに収納しやすさも考慮している。
さらに、「毎回足場を組むのは大変なので、点検架台として台車に載せて移動できる治具がほしい」、「円盤状の板を狭いところから納入しなければならないので板を縦に起こして入れられる専用の輸送台車がほしい」などという要望など、一つ一つの作業過程に合わせた治具も製作している。
<インターン受け入れや工場見学などで業界の魅力をアピール>
弊社では、大学、高専、工業高校などのインターンシップを受け入れており、ガス切断や溶接など簡単な作業を体験してもらっている。一昨年からは中学生の社会体験実習の受け入れも始めた。次の世代に鉄鋼業や製造業について理解してもらうことは重要だ。人材不足でなかなか学生に来てもらえないので、どんどんアピールしていきたい。こうした中で、一昨年は「ものづくりがしたい」と法学部出身者が入社してきた。また、昨年は現場にも女性が入った。クレーンがあれば女性でも作業に支障はない。ものづくりの魅力について、もっと認知してもらいたいと願っている。
また、曽田鉄工とはどんな会社なのかを知ってもらうため、工場見学も行っており、学校の先生やハローワークのスタッフ、主婦などにも来ていただいている。一昨年には「オトナの工場見学会」として、同じ工業団地内の製菓企業と弊社がタイアップして鉄工所と菓子工場のものづくり観光ツアーを開催した。地域とともに発展する会社として、こうした企画をまた実施したいと思っている。
さらに、弊社が常に広い視野を持つためにも、「Go-Yen.netしまね」などの企業連携グループに加盟し、全国各地のものづくりグループが集まって、相談や交流を行う場を設けている。同グループにはコンサルタントや旅館の女将などの幅広いメンバーが所属しており、最近も2社がコラボレーションして新しい商品が生まれ、ネット販売でなかなか好調のようだ。また弊社内では、整理、整頓、清掃の3S活動に取り組んでいるが、こちらも4社ほどでグループを組んで、コンサルタントにも入ってもらって互いに切磋琢磨している。安全で快適かつ効率的な職場を目指し、社員自身の「気づき」の感覚を養っている。
弊社は、顧客の求める製品を創意工夫と高い技術で創造し、人を育て、地域とともに発展することをめざしている。ものづくりを通じて、今後も地域に貢献していきたい。