第38回原産年次大会(2005.4 新潟)

原子力50年、安全と信頼の新たな段階をめざして
会期:
平17年4月18日(月)~21日(木)
会場:
柏崎市・市民会館、新潟市・朱鷺メッセ

大会プログラム

セッション内容

第38回原産年次大会の開催について

 日本原子力産業会議は、主要事業の一環として、国内外の関連分野から広く関係者の参加を得て、毎年春に「原産年次大会」を開催しています。

 年次大会はエネルギー・原子力の開発利用上の重要な問題について意見の発表と討論を行う場として開催されており、本大会を通して、重要課題とその解決策を見出すための指針を得るとともに、原子力研究開発利用の進め方について国民の理解促進に資することを目的としています。

 平成17年の第38回原産年次大会については、新潟県知事および柏崎市長より当会議に対し新潟県での開催要請が寄せられました。新潟県は世界でも最大級の柏崎刈羽原子力発電所を有する重要な原子力立地県であり、県民の原子力に対する関心が高い地域です。昨今の原子力界における様々な問題を背景として、わが国が今後原子力利用を進める上での自治体と国や原子力産業界の関係および各々の役割などについて、新潟県をはじめとする原子力立地地域からの意見発信が増加しています。

 このような状況を踏まえ、当会議としては、年次大会が新潟県の方々と原子力関係者等との信頼感の醸成と相互理解の促進に資することを念頭におき、下記により第38回原産年次大会を開催することとし、諸準備を進めています。大会の基調テーマおよびプログラム編成等については、長谷川彰 新潟大学学長を委員長とする準備委員会において、内容の検討を進めていきます。

○会場等:
平成17年4月18日(月) 柏崎市・市民会館
平成17年4月19日(火) 新潟市・朱鷺メッセ
平成17年4月20日(水) 同 上
平成17年4月21日(木) テクニカルツアー
○問合先:
(社)日本原子力産業会議 政策企画本部
TEL: 03-5777-0751
FAX: 03-5777-0760
E-mail: 38th-annual@jaif.or.jp

第38回原産年次大会準備委員名簿

(敬称略、50音順)

委員長 長谷川 彰 新潟大学 学長
委員 会田 洋 柏崎市長 (2004.12.6~)
秋庭 悦子 NPO法人あすかエネルギーフォーラム 理事長
上原  明 新潟県商工会議所連合会 会頭
内山 洋司 筑波大学 教授
勝俣 恒久 東京電力(株) 社長
神田 啓治 京都大学名誉教授、エネルギー政策研究所 所長
小島  陽 長岡技術科学大学 学長
西川 正純 柏崎市長 (~2004.12.5)
笹岡 好和 全国電力関連産業労働組合総連合 会長
品田 宏夫 刈羽村長
関  昭一 新潟県を豊かにする会 会長
高橋 康隆 新潟県エネルギー懇談会連絡協議会 会長
丹野 賴元 新潟工科大学 学長
殿塚 猷一 核燃料サイクル開発機構 理事長
鳥井 弘之 東京工業大学 教授
橋本 哲夫 新潟大学 教授
藤  洋作 電気事業連合会 会長
保坂いよ子 新潟県婦人連盟 理事長
幕田 圭一 東北電力(株) 社長
松村 保雄 柏崎商工会議所 会頭
森下 洋一 (社)日本電機工業会 会長
吉田 綾子 新潟市連合婦人会 理事長
オブザーバー 石川 誠己 外務省 総合外交政策局 軍縮不拡散・科学部
国際原子力協力室 首席事務官
久住 和裕 新潟県 産業労働部長
戸谷 一夫 内閣府 政策統括官付参事官
柳瀬 唯夫 経済産業省 資源エネルギー庁 原子力政策課長
渡辺  格 文部科学省 研究開発局 原子力課長

第38回原産年次大会の総括

 日本原子力産業会議は、2005年4月18日(月)~21日(木)の4日間(21日はテクニカルツアー)にわたり、「原子力50年、安全と信頼の新たな段階をめざして」を基調テーマとして、第38回原産年次大会を新潟県柏崎市(柏崎市民会館)と新潟市(朱鷺メッセ)で開催した。今大会は新潟県および柏崎市からの要請を受けての開催で、国内外の政府、自治体、研究開発機関、電力、メーカーなどの原子力関係機関、大学、一般市民など、11カ国・地域、2国際機関から1,180名が参加した。

 原産年次大会は、エネルギー・原子力の研究開発利用上の重要課題を取り上げ、その解決策を見出すための指針を得るとともに、国民の理解促進に資することを目的として、原子力研究開発利用に携わる関係者のみでなく、一般市民を含めた各分野の方々の参加を募り、原子力の問題、課題、将来展望などについて発表や意見交換、討論を行ってきている。

 今大会の開催にあたっては、長谷川彰新潟大学学長を委員長とする準備委員会を設置し、我が国の原子力基本法が制定されたちょうど50年前から今日までの原子力開発利用をレビューしつつ、政府・自治体・産業界が各々の責任において安全・安心を確保しながら我が国に不可欠な原子力平和利用を次の50年に継承するための諸方策を議論するとともに、地域からの意見発信をねらいとする基調テーマとプログラムを編成した。

 大会の講演とパネル討論を通じて、原子力関係者の間で関心の高い事案をめぐる議論の中から重要なメッセージが発せられるとともに、地元参加者の積極的な意見発信がなされた。大会の総括として、それらを以下に記述する。

  • プレナリーセッション「柏崎・刈羽からのメッセージ──地域社会と環境・エネルギー・私たちの暮らし」の中で、地元の行政・報道・学界関係者から、地元が原子力発電所と共生する観点から、安心を得る上で産消地域の意識差の解消の必要性、地域への影響が大きい原子力発電所に対する報道のあり方等、発電所とメディアの緊張ある関係等について問題提起した。地元関係者によるパネル討論では、原子力発電の重要性を認識しつつも地元として直面する諸問題が議論された。安心感を得るための正しい情報を得る努力と信頼関係の重要性や信頼構築に向けた日頃からの取組みの積み重ねの必要性が指摘されるとともに、国の原子力関係者が定期的に立地地域を訪れて意見交換を求める意見等が出された。柏崎大会の総括として、参加者の間で、原子力は地域社会と共にあるべきことが再認識され、「地域に支えられつつ地域を支える原子力」を目指した関係者の取り組みが不可欠なことがあらためて明確になった。
  • セッション1「原子力発電所の安全と管理を問い直す──『マイプラント意識』確立への課題」では、原子力発電所の運転管理重視を目指す中で自主保安の徹底の必要性に焦点をあてながら、発電所における現場の実情を踏まえた安全確保と運転管理の課題を議論した。その中で、安全確保の実効性を高めるための規制側と被規制側における無理やむらの解消が必要であること、強化・煩雑化するだけでなく現場で納得感の得られる規制制度の重要性、電力会社・協力企業・地元住民の間での発電所全体における安全管理等の情報や意識の共有の重要性――が明確になった。
  • セッション2は、「躍進するアジアの将来――エネルギー需要の増加と原子力発電の拡大」をテーマとして、我が国の政府関係者、メーカー、電気事業者等に加え、近隣アジア諸国の関係者が参加して討論を行った。その中で、トップレベルにある我が国の原子力機器製造技術を近隣アジアなど海外で有効活用することは世界のエネルギー安定供給と温暖化対策への大きな貢献である点や、原子力の国際展開が進展する中で、プラントメーカーの技術力の維持・向上が、電気事業者の運転実績向上とともに、我が国の原子力産業活性化につながるとの認識で一致をみた。産業界の強い意欲のもとで電気事業者の間に一定規模の原子力開発や原子力産業の輸出が可能となるよう、国が環境整備に主体的に取り組む重要性が確認された。
  • セッション3「原子燃料サイクル実現の実行シナリオを描く」の中で、日本原燃六ヶ所再処理工場でのウラン試験の進捗状況と本年末から実施予定のアクティブ試験の概要や、将来の本格的なプルサーマル利用に備えたMOX燃料加工工場建設計画について最新情報が提供された。さらに、サイクル機構からは3月に改造工事が開始された「もんじゅ」の将来計画とFBRサイクル研究開発の展望が示されるなど、軽水炉燃料サイクル事業や将来を見据えたFBRサイクル開発の着実な進捗について明確にメッセージが発信された。
  • 「市民の質問と意見交換の会」では、暮らしの中の放射線利用と米国の女性の原子力に対する意識が紹介され、ともに、市民自らが積極的に原子力について知りたいと考え、情報を得ようとする態度が重要である点が市民に対して問題提起された。
    参加した一般市民は、ウラン資源の最近の報道と関連してプルサーマルを実施する意義、柏崎市に企業誘致する上で原子力発電所が立地していることの影響、住民の納得と信頼が得られる情報提供のあり方等について質問した。これらに対して、原子力関係者より、推論値としてのウラン資源量にとらわれず、燃料リサイクルがエネルギー分野での我が国の安全保障上重要な意義を有する点、新技術を快く受け入れる用意のある地域にこそ企業は進出したいと考える点、プルサーマルも含め計画に対して合理的な議論が可能な社会システムを構築することが重要である点――などが回答・意見として述べられた。