第43回原産年次大会(2010.4 松江)
- 地方14紙に大会の採録記事広告を掲載しました。 (2010.6.24) [2,237KB]
第43回原産年次大会、松江市で開催
当協会は4月20日から22日、島根県松江市の「くにびきメッセ」で、第43回原産年次大会を開催しました。今回は、「エネルギー安定供給と温暖化対策の担い手として―原子力の将来を考える」を基調テーマに、19か国・地域から約1,060人が参加し、活発な議論と意見・情報交換を行いました。また、初日20日には約90人の参加を得て、中国電力・島根原子力発電所等を視察するテクニカルツアーを実施しました。
21日の開会セッションで、今井敬・原産協会会長(=写真左)が所信表明を行い、地球温暖化対策の切り札として、原子力発電の重要性を改めて強調しました。さらに、今後の積極的な海外展開を推進する必要性に言及するとともに、今大会が世界的な「原子力ルネッサンス」の潮流の中、島根県の方々と原子力関係者との信頼感の醸成、相互理解に資する有意義な大会となるよう期待を示しました。
続いて、近藤洋介・経済産業大臣政務官(=写真右)が、鳩山由紀夫総理大臣のメッセージを代読しました。世界規模で地球温暖化問題に対処するためには、原子力の活用が不可欠との考えのもと、「政府としても、原子力産業の国際展開に積極的に貢献していきたい」と述べました。
また、開催地を代表して溝口善兵衛・島根県知事、松浦正敬・松江市長から、「県・市内に立地する原子力発電所の一層の安全確保がなされるよう求める」などとする挨拶をいただきました。
続く特別講演では、国際原子力機関 (IAEA)の天野之弥事務局長(=写真左)がグローバル・イシューの解決に向けたIAEAの取り組みを紹介。また、米国エネルギー省(DOE)のウォーレン・ミラー原子力担当次官補がオバマ政権の原子力政策について、露・ロスアトムのピョートル・シェドロビツキー副総裁がロシアの原子力発電開発計画について講演しました。
このほか、国際エネルギー機関(IEA)のリチャード・ジョーンズ事務局次長のビデオ講演が流されたほか、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)のベルナール・ビゴ長官の「長期エネルギー安全保障および環境保護に関するフランスの政策と戦略」と題する講演が代読されました。
21日午後には、セッション1「気候変動問題解決の切り札として、原子力をどう位置づけるか」を開催。フランツ=ミカエル・スキョル・メルビン駐日デンマーク大使が「原子力がグリーン・フューチャーの一部となるために」と題して基調講演を行った後、鳥井弘之・元日本経済新聞社論説委員を座長に、秋元圭吾・(財)地球環境産業技術研究機構 システム研究グループリーダー、鈴木達治郎・原子力委員会 委員長代理、東嶋和子・科学ジャーナリスト、松井三生・中国電力(株)取締役副社長にご参加いただき、パネル討論を行いました。メルビン大使からは、COP15では期待されたほどの十分な成果は得られなかったものの、エネルギー政策を大きく変えるという勢いが見られたこと、また、日本の原子力産業界に対し「原子力と再生可能エネルギーがいかに補完し合うことができるか」を注視して欲しいとの熱いメッセージが送られました。パネル討論では、原子力分野に限らない異なる視点を有する識者から、わが国のエネルギー・原子力政策はどうあるべきか、気候変動問題の解決にむけて原子力をどう位置づけるべきかについて検証が行われました。
大会最終日の22日は、セッション2「原子力ルネッサンスの実現に向けて――各国の原子力・エネルギー政策と展望」では、ベトナム、中国、韓国の代表からの発表がありました。原子力ルネッサンスと呼ばれる動きを現実のものとするためには、燃料供給、使用済み燃料や廃棄物の処理処分、3S(保障措置、原子力安全、核セキュリティ)に対して世界規模で対応することが必要であり、人材育成や規制の透明性が重要との観点から、各国の原子力エネルギー政策の紹介と、原子力ルネッサンスの実現に向けて取り組むべき課題とその解決策について考察しました。
セッション3「原子力発電所のある町で、私たちは考える――島根県の原子力、40年とこれから」では、ドイツのヒルデガルト・コルネリウス=ガウス・ヘッセン州ビブリス町長が「ドイツにおける不確実な原子力の将来とビブリスへの影響」と題する基調講演を行い、原子力の推進には合意を得る必要があるが、そのための議論は事実に基づいて行わなければならないことを強調しました。続くパネル討論では、八木絵香・大阪大学コミュニケーションデザインセンター特任准教授をファシリテータに、井川陽次郎・読売新聞論説委員、石原孝子・松江エネルギー研究会代表、大谷厚郎・松江商工会議所副会頭、山名元・京都大学原子炉実験所教授、山本廣基・島根大学学長にご参加いただき、幅広い角度から「原子力発電所と立地地域の共生・共益」等を考えつつ、原子力を推進する上での社会とのコミュニケーションのあり方について問題提起・意見交換を行い、課題解決策を探りました。