今回は、国内船舶輸送における領海外の扱いについてQ&A方式でお話します。
- (領海外での原子力事故)
国内船舶が核燃料の国内輸送中に、日本の領海の外で原子力事故を起こしてしまった場合、原賠法は適用されますか?
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- 我が国の法律が適用される範囲は、基本的には主権が及ぶ領域です。
- 公海上では原賠法が適用されず、原子力事業者である荷主に賠償責任が集中することにはなりません。
- 日本国籍船内は原則的に日本法の及ぶ範囲なので、原賠法が適用されます。
【A1.の解説】
公海上の原子力事故によって、どこかの国や、周辺の船あるいは乗組員等に原子力損害が生じた場合には、損害を被った国、被害者の国、被告の国(事故を起こした船舶、荷主、輸送会社などの国)のいずれかの国の裁判所に損害賠償が提訴され、その国の法律に基づいて裁判が行われるのが原則です。
裁判の際、日本の裁判所であれば日本の原賠法に基づいて、原子力事業者(荷主)に責任が集中することになり、海外の裁判所であれば当該国の不法行為法に基づいて、事故の原因に応じて責任が認められる全ての関係者に損害賠償請求が及ぶこととなります。
なお、日本国籍船内は原則として日本法の及ぶ範囲なので、日本船籍の船舶自体や、その積荷、乗組員等に原子力損害が生じた場合には、我が国の原賠法が適用されることとなります。
- (国際海峡を航行する際の賠償措置)
日本の原賠制度において、領海内の航行と国際海峡(津軽海峡等)の航行との間に賠償措置の違いはありますか?
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- 原子力事業者がその事業に付随してする運搬を行う場合、原賠法に定められた損害賠償措置を行わなければなりません。
- 航行する場所によって損害賠償措置の違いは発生しません。
【A2.の解説】
我が国の原子炉等規正法により許可を受けている原子力事業者が、その事業に付随してする運搬(核燃料、使用済み燃料等の輸送)を行う場合、原賠法に定められた損害賠償措置(原稿では40億円と240億円の2措置額に区分される)を行わなければなりません。これは航行する場所(領海、国際海峡、公海)によって違いは発生しません。
なお、我が国の「領海及び接続水域に関する法律(領海法)」では領海の範囲を原則として基線(低潮線、直線基線及び湾口若しくは湾内又は河口に引かれる直線)からその外側12海里の線までの海域と定めていますが、附則第2項により、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道、大隅海峡の5ヶ所の特定海域は、基線からその外側3海里の線までの海域を領海としており、3海里を超える海域は公海となります。
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