米国の2023年原子力世論調査結果について

🄫ビスコンティ・リサーチ社

米ビスコンティ・リサーチ社が実施した原子力に関する全米対象の世論調査結果によると、原子力に対する米国民の支持は記録的な高水準が続いていることが明らかになりました。今年4月28日~5月5日に実施された調査では、国民の4分の3が原子力を支持し、10人に約7人が新規建設を支持するという結果になりました。また今回の調査では改めて、原子力エネルギーについて情報が与えられていると感じる(feeling informed)レベルと強い支持(favourability)との間に非常に密接な相関関係があることが分かりました。

ここでは、この調査で得られた以下の6つの主な調査結果について、詳報します。

  1. 原子力支持率が3年連続で高いレベルを維持。
  2. 原子力を強く支持する人の割合は29%で、強く反対する人の割合5%の約6倍。
  3. 「原子力について多くのことを知っている」と感じている人の中で支持率が高い。
  4. 「米国民の大多数が原子力を支持している」と考える人の割合が56%だったのに対し、実際の支持派は76%であり、20ポイントの開きがある。
  5. 原子力規制委員会(NRC)が各原子力発電所を日々監督していると知ることは、原子力発電所が安全であるという考えを大幅に強めている。
  6. 原子力が話題になるのは、信頼性、クリーンな空気、エネルギー・セキュリティ、そしてエネルギーの独立に関連している。

6/5付原子力産業新聞「米意識調査:原子力への支持率が3年連続で過去最高レベルに」

1.原子力支持率が3年連続で高いレベルを維持

米国民の3/4(76%)は、米国で電力を供給する方法の一つとして原子力エネルギーの使用を強く、またはやや支持すると答えた一方、24%が反対した。これらの数値は、2021年以降統計的には変化していない。過去40年間でずっと好意的になった。過去10年間で、支持は60%台で頭打ちになっていた。

原子力エネルギーに対する支持(1983~2023年)

              全体として、米国 で電力を供給する方法の一つとして原子力エネルギーを使用することに
              強く賛成、やや賛成、やや反対、または強く反対しますか? (%)

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多くの米国人は、原子力エネルギーとその役割について好意的な意見を持っている。

・86%が、原子力エネルギーは今後数年間で国の電力需要を満たすうえで重要になると回答。

・89%が、連邦の安全基準を一貫して満たしている原子力発電所の運転認可を更新することに賛成。

・87%が、先進設計の原子力発電所が電力を供給できるよう、米国が今すぐ準備すべきという意見に賛成。

・71%は、今後原子力発電所をもっと作るべきだという意見に賛成。

連邦の安全基準を一貫して満たしている原子力発電所の運転認可更新に対する多くの支持は、COVIDの落ち込み後、再び浮上した。

連邦の安全基準を一貫して満たす原子力発電所の運転認可更新への支持(1998~2023年)

  次の意見に、どの程度賛成または反対しますか: 現在の運転認可が期限切れになった場合、
連邦の安全基準を一貫して満たしている原子力発電所の運転認可は更新すべき。(%)

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過去3回の調査で分かった原子力発電所の追加建設への支持は、最初に質問がされて以来、前例のないものである。新しいプラントに対する大多数の支持は、政治に関係なく、人口統計学的グループに広がっている。女性は男性に比べて、より多くのプラントを建設することについて確信が低い。

原子力発電所の増設への支持(1998~2023年)

                    次の意見に、どの程度賛成または反対しますか: 
                    今後、原子力発電所をもっと建設すべき。(%)

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多様な人口統計グループの大多数は、原子力エネルギーと新しいプラントを支持

         ・全体として、米国で電力を供給する方法の一つとして原子力エネルギーを使用することに
          強く賛成、やや賛成、や反対、または強く反対しますか? 

         次の意見にどの程度賛成または反対しますか? 今後、原子力発電所をもっと建設すべき。(%)

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原子力を支持する理由は主に、手頃な価格で信頼性が高く、効率的であるという必要性と、きれいな空気と気候変動に関連する環境上の利点に関するものである。ロシアのウクライナ戦争により政策議論で再浮上したエネルギー自給とエネルギー・セキュリティのテーマは、原子力に関する意見の主な理由としてまだ引用されていない。

原子力に反対する意見は主に、危険に焦点が当たっているが、なかには原子力エネルギーがより安全になっていると言及する人もいた。原子力エネルギーに関する意見の理由についての自由回答形式の質問では、廃棄物について言及する人はほとんどいない。

原子力エネルギーに関する意見の理由

            「米国で電力を供給する方法の一つとして原子力エネルギーを使用することについて、
             あなたの意見の理由は何ですか?理由を3つまで上げて下さい。

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2.原子力を強く支持する人の割合は29%で、強く反対する人の割合5%の約6倍

2023年5月には、29%が原子力エネルギーを強く支持し、5%が強く反対し、6対1の差となった。残りの66%はフェンスシッター(中立的、傍観的)と見なすことができる。男性よりも女性の方がフェンスシッターが多い。男性の大卒が最も強く支持している。

意見は変わりやすい:たいていの人は中間にいる

             全体として、米国で電力を供給する方法の一つとして原子力エネルギーを使用することに
             強く賛成、やや賛成、や反対、または強く反対しますか?

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3.「原子力について多くのことを知っている」と感じている人の中で支持率が高い

2023年5月、男性の23%と女性のわずか6%を含め、国民のわずか14%のみが十分に情報が与えられている(informed)と感じている。

原子力エネルギーについてより多くの情報に通じている(情報が与えられている)と感じるほど、人々は原子力をより支持する。2023年には、原子力エネルギーについて非常によく知っていると答えた人のうち、74%が原子力を強く支持し、強く反対したのはわずか4%だった。

全く十分な情報が与えられていないと感じたと答えた人々は、原子力に最も好意的ではなかった。

 

より多くの情報に接していると感じるほど、より好意的になる

          ・電力を生産するために使用される原子力エネルギーについて、どの程度十分な情報を得ていますか?

          ・全体として、米国で電力を供給する方法の一つとして原子力エネルギーを使用することに
           強く賛成、やや賛成、やや反対、または強く反対しますか?

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4.「米国民の大多数が原子力を支持している」と考える人の割合が56%だったのに対し、実際の支持派は76%であり、20ポイントの開きがある

76%が個人的に原子力エネルギーを支持すると回答したが、国民の大多数が原子力エネルギーを支持すると考えているのはわずか56%だった。この認識のギャップは、人口統計グループ間で現れている。

世論の認識はより好意的になったものの、認識のギャップは根強い

          ・全体として、米国 で電力を供給する方法の一つとして原子力エネルギーを使用することに強く賛成、
           や賛成、やや反対、または強く反対しますか? (%)

          ・あなたのコミュニティの大多数の人々は、原子力エネルギーの使用に賛成または反対していると思いますか? (%)

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5.原子力規制委員会(NRC)が各原子力発電所を日々監督していることを知る人の中で、原子力発電所の安全性を信じる人の数が大幅に増えた

過去20年間で、より多くの国民が、NRCが毎日各原子力発電所を監視していると信じるようになった。その数は2000年の8%から今日では22%に増加している。

原子力規制委員会が原子力発電所を監視する頻度

   ・2023年5月:「連邦原子力規制委員会(NRC)は、米国の各原子力発電所が連邦の安全要件を満たしていることを確認するために、
    どのくらいの頻度で監視していると思いますか? わからない場合は、ベストな推測をしてください。答えを一つ選択してください。」

   ・2000年4月:米国原子力規制委員会は、この国の103基の原子力発電所の規制を確立し、施行する責任があります。
    この機関をNRCと呼びます。NRCが各原子力発電所の安全性をどのくらいの頻度で監視していると思いますか?」

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回答者には、次の情報が示された:実際、連邦原子力規制委員会(NRC)は、米国の各原子力発電所を毎日監視して、連邦の安全要件を満たしていることを確認しています。これを知って、あなたはこれらの原子力発電所をどれほど安全だと思いますか? この情報を聞いた後、安全性の評価は、調査の前半で尋ねられたときよりもはるかに好意的だった。最も好意的な変化は女性に見られた。

原子力発電所の安全性評価(NRC監視の情報について知る前と後)

「1」から「7」までのスケールで1つの番号を選択して下さい。
「1」は非常に安全ではないことを意味し、「7」は非常に安全であることを意味します。
(原子力発電所が)より安全だと思うほど、数は大きくなります。

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6.原子力が話題になるのは、信頼性、クリーンな空気、エネルギー・セキュリティ、そしてエネルギーの独立に関連している

かなりの数の一般市民が、信頼性、クリーンな空気、エネルギーの独立、エネルギー・セキュリティなど、過去1年間に原子力エネルギーの有益な特性について聞いたことある。

過去1年間に、特定の原子力エネルギーのトピックについて何か聞き覚えがありますか

この一年間、以下の話題について何か聞いたことがありますか?
「はい」と答えた割合

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この情報に同調した女性は、男性よりも少なかった。大卒の男性は、原子力エネルギーの有益な特性について特に聞く機会が多かった。政治的には、この情報を聞いたことがあるのは共和党員が多く、無党派層は少なかった。

過去1年間に、特定の原子力エネルギーのトピックスについて何か聞いたことを
思い出してください:「はい」と答えた %

この一年間、以下の話題について何か聞いたことがありますか?

🄫ビスコンティ・リサーチ社

過去一年間に原子力エネルギーが持つ有益な特性について聞き覚えがある人々は、そうでない人々よりも原子力エネルギーにはるかに好意的である。例えば、信頼できるエネルギー源としての原子力について尋ねる質問においては、この情報が好意的な意識を高めたのか、それともすでに原子力に好意的な人が、原子力に関する好意的な情報により注意深くなっただけなのかは不明である。いずれにせよ、情報は、おそらく既存の態度を強化したものと思われる。

原子力エネルギーの信頼性について聞いたことがあるかどうかによる原子力への好感度

   この一年間、以下の話題について何か聞いたことがありますか? 「全体として、米国で電力を供給する方法の一つとして
原子力エネルギーを使用することに強く賛成、やや賛成、やや反対、または強く反対しますか?」

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お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)