COP28・原子力関係活動参加報告
原産協会は 11 月 30 日~12 月 12 日にアラブ首長国連邦・ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第 28 回締約国会議(COP28)に役職員 4 名を派遣しました。今年は世界原子力協会(WNA)と首長国原子力公社(ENEC)によって立ち上げられたイニシアチブ「ネットゼロニュークリア(NZN)」に、各国原子力産業界団体(カナダ原子力協会(CNA)、日本原子力産業協会(JAIF)、英国原子力産業協会(NIA)、米原子力エネルギー協会(NEI)、欧州原子力産業協会(nucleareurope))が参画し、同イニシアチブによって設置されたパビリオンを拠点として、各国からの COP28 参加者等に対し原子力に関する訴求活動を行いました。また気候変動における原子力の重要性の理解活動を展開している「Nuclear for Climate」(N4C)の枠組みのもとでもパビリオンを出展し、若手を中心としたメンバーが会場内での PR 活動やサイドイベントなどでの理解促進活動を合わせて行いました。
Net Zero Nuclear (NZN) の活動について
COP28 メイン会場にある国・国際機関エリア(ブルーゾーン)及び、一般参加者向けエリア(グリーンゾーン)それぞれに、NZNの活動の拠点としてパビリオンを設置しました。ブルーゾーンのパビリオン(広さ約50平方メートル)では、産業界団体関係者によるパネルディスカッションや対話活動等イベントの開催、メディアインタビュー、各国の参加者とのネットワーキング、原子力関連情報の放映などを実施しました。グリーンゾーンのパビリオン(広さ約100平方メートル)では、組織間の交流・ネットワーキングやパネルディスカッション等のイベントの開催に加え、クリエイター(動画・ポッドキャスト等)向けブースを設置し、NZNイベント参加のためのハブ的役割も果たしました。また、COP28におけるNZNの活動については、当協会の会員である日立GEニュークリア・エナジー株式会社、東芝エネルギーシステムズ株式会社、三菱重工業株式会社、 株式会社IHI、日揮グローバル株式会社、電気事業連合会の6社からそれぞれご協賛をいただきました。
「Nuclear for Climate」(N4C)の活動について
当協会は、2015年にパリで開催されたCOP21に向け、世界150以上の原子力学協会と団体により結集されたN4Cイニシアチブに一年目から参加しています。今年もCOP28開催までにN4Cのコアメンバーである世界の原子力産業界団体と#NetZeroNeedsNuclearを掲げたSNSキャンペーンや、ポジション・ペーパーの公開等を通じて、原子力と再生可能エネルギーの協調を打ち出し、「2050年までに世界がネットゼロを達成するには原子力が必要」とのメッセージを発信しました。また、昨年同様パビリオンを出展し、若手を中心としたメンバーが会場内でネットゼロ達成に向けた原子力の果たす役割について積極的にPR活動を行いました。N4CのパビリオンにはIAEAグロッシー事務局長や、OECD/NEAのマグウッド事務局長ら、産業界の要人も次々と訪問し、若者を激励する姿が目立ちました。日本からは東芝エネルギーシステムズ(株)四柳端社長が来訪し、若者たちに取り囲まれていました。
NZNサミットについて
COP開催期間中である12月7、8日に「NZN サミット」と称するイベントを会場外にて開催しました。広く世界から官民のハイレベル関係者が一堂に会し、原子力発電所の新規建設をめぐる政治的な課題やファイナンス面でのソリューション、次世代による新しいコミュニケーションのあり方や、これからの環境主義(environmentalism)などが議論されました。また、本サミットでは特別セッションとして、日本をはじめとする米国、フランス、カナダ、英国の5首脳が、原子燃料の供給保障を万全にするため、新たな燃料サプライチェーンの構築に42億ドルを投じることが急遽発表(「札幌5」宣言)されました。クロージングセッションには産業界団体の代表が登壇し、最後にあいさつした原産協会の植竹明人常務理事は「すべての根底にある最も重要な要素は安全」であると強調し、「常に安全性について社会と議論しコミュニケーションすることが、私たちの 2050 年の目標に向けた長い挑戦を支える基礎になる」と結びました。
COP28及びNZNサミットで実施されたイベントについて
COP28 及びNZNサミットにおいては、合計90以上もの原子力関連イベントが実施され、そのうち6つのイベントで原産協会関係者が登場しました。 COP7日目の12月6日には、原産協会を含む各国の原子力産業団体が主催する、COP28公式のサイドイベント「電力部門ならびに排出削減困難なセクターにおける原子力の活用」が開催され、当協会の植竹明人常務理事及び、有馬純東京大学特任教授(当協会理事)らが登壇しました。本イベントでは各国の原子力による脱炭素化の現状や取り組みが紹介される中、原子力による水素製造についての必要性について、日本での実例を踏まえて言及し、非電力部門の脱炭素化のカギを握るのは原子力由来水素だと訴えました。
<原産協会が関わった主要イベント>
・12/2 NZN Ministerial Declaration 署名イベント(原産協会よりプレスリリースを公表)
・12/2 NZN Blue Zone パビリオンオープニングセレモニー
・12/5 NZN Pre-Industry Pledge event(植竹常務理事登壇)
・12/5(COP28 公式イベント)NZN Industry Pledge/ Ministerial Declaration 公表イベント
・12/6(UNFCCC 公式サイドイベント)原子力による脱炭素化への貢献(有馬理事、植竹常務理事 登壇)
・12/7 G5 燃料サプライチェーン共同声明発出(原産協会よりプレスリリースを公表)
・12/8 NZN サミットクロージングセッション(植竹常務理事登壇)
各国政府及び原子力産業界からの誓約の発出
COP3日目の12月2日、日本をはじめとする米英仏加など22か国が、「パリ協定」で示された 1.5℃目標の達成に向け、 世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという野心的な宣言文書に署名しました。
それを受けて、COP6日目の12月5日、NZNイニシアチブが発起人となり、「Net Zero Nuclear Industry Pledge」が、当協会と当協会の会員企業12社を含む世界120社・機関の賛同を得て署名、発表されました。原子力産業界は、本誓約の中で、2050年までに原子力発電設備容量を3倍にする目標の達成に向け、政府、規制当局などと協力し、安全を最優先としながら、現在運転中の既存炉の運転期間を最大限延長すると同時に、新規建設のペースを加速していくことにコミットするとしています。
原産協会が行ったその他の活動
現地に派遣された原産協会職員は、主にNZNパビリオン及びN4C関連活動に参加しましたが、滞在中は原子力産業新聞取材・記事作成や、SNSを通じての活動内容の情報発信、海外の原子力関係者へのインタビューも行い、現地からの積極的な情報発信を行いました。このような活動を通じて海外関係者との友好関係を深めることができ、 原産協会の今後の活動に繋げることができるような人脈も築くことができました。
COP28における原子力に関する新たな動き
近年のCOPにおいては、原子力による気候変動対策への貢献が徐々に評価され、各国及び原子力関連団体(IAEA、N4C等)のパビリオンにおいては、連日原子力に係るイベントが開催されるなど、COPにおける原子力の存在感は高まりを見せていましたが、今回その傾向は顕著にみられ、多くの国や現地企業であるENECからのサポートも受け、COP28開催期間中には90(NZNサミット含む)以上もの原子力関連イベントを開催することができました。また、COP28の成果文書である「UAEコンセンサス」では、COP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記されました。これは排出量削減が困難な分野や水素製造等におけるゼロ炭素/低炭素テクノロジーの中で、再生可能エネルギーやCO2回収・有効利用・貯留(CCUS)と並ぶテクノロジーとして、原子力がリスト入りしたものであり、気候変動対策の手段としての原子力への注目は、今までにないほどの高まりを見せています。
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