米国エネルギー情報局(EIA)ウラン市況年次報告書概要紹介

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米国エネルギー情報局(EIA)がこのほど発表した最新のウラン市況年次報告書(2022 Uranium Marketing Annual Report)によると、米国の原子力発電所は引き続きウラン供給を海外に大きく依存している実態が明らかになりました。2022年に米国が調達したウラン製品のうち、カナダが全体の27 %を占め、次いでカザフスタンが25 %、ロシアが12%と第3位でした。また燃料の製造過程で必要な濃縮役務の購入においては、全体の4分の3にあたる73 %が海外起源となりました。このうち、ロシアからは340万SWU(Separative Work Unit, ウランを濃縮する際に必要となる仕事量の単位(分離作業単位)) が供給され、米国による390万SWUに次ぐ濃縮シェアをロシアが占めています。


下記に年次報告書の概要について、図表を交えて紹介します。


<ウランの購入と価格>

報告書によると、2022年に米国の民生用原子炉の所有者および運転者(civilian owner/operators, 以下COO)が購入したウラン総量は、U3O8(八酸化三ウラン)換算で4,050万ポンドとなり、2021年の総量4,670万ポンドから13%減少した。また2022年の購入量の加重平均価格は1ポンドあたり39.08ドルで、2021年の加重平均価格1ポンドあたり33.91ドルより15%高く、2016年以来の高値となった(表1)

 表1 米国民生原子炉の所有者・運転者(COO)によるU購入(海外供給業者と合計)

2022年の米国最大のウラン調達先はカナダで、全体の27 %を占めた。次いでカザフスタンが25 %、ウズベキスタンが11 %、オーストラリアが9 %と続く。2022年の総供給量に占める米国産の割合は5%であった(表2、図1)。(注:報告書原文にはロシアについて言及されていないが、ロシアが占める割合は12%と調達先第3位)。

 表2 米国COOによるU購入(U原産国別)

またCOOは、2022年の納入分として3種類のウランを31社から購入した(表3、表4)。2022年中に納入されたウランの15 % はスポット契約(加重平均価格は1ポンド当たり40.70ドル)で購入され、残りの85%は長期契約(加重平均価格は1ポンド当たり38.81ドル)で購入された(表5)。

 表3 米国COOによるU購入(原料別)

 表4 米国COOへのウラン販売業者(2020~2022年)   ©EIA

 表5 米国COOによるU購入(契約・原料別、2022年納入)

<新規および将来のウラン契約>

COOは2022年、27件の新規購入契約を締結、2022年の納入量は460万ポンドU3O8e(加重平均価格は1ポンド当たり41.87ドル)であった(表6)。2022年末時点で、COOの既存の購入契約に基づく2023年から2032年までの最大ウラン納入量は、合計2億2,300万ポンドU3O8eだった(表7)。また、2022年末時点で、2023年から2032年までの未充填ウラン市場の需要は合計1億7,900万ポンド U3O8eである(表8)。これらの契約済納入量と未充填の市場需要量を合わせると、今後10年間で予想される最大市場需要は4億200万ポンド U3O8eとなる。

 表6 米国COOが2022年に締結した購入契約(契約別)

 表7 米国COOによるU購入契約(2022年末時点有効、納入年2023-32年)

 表8 米国COOの市場需要の未充填量(納入年2022-32年)

<ウランフィード(原料)、濃縮役務、装荷ウラン>

2022年、3,500万ポンド(U3O8e)の天然ウランフィード(原料)が米国および海外の濃縮業者に引き渡され、そのうちの41%が米国の濃縮業者に引き渡された(表9)。COOはまた2022年、1,400万分離作業単位(SWU)(=14,000 tSWU)の濃縮役務を9社から購入した。2022年にCOOが1,400万SWUに対して支払った平均価格は、101.03ドル/SWUであり、2021年の99.54ドル/SWUからわずかに上昇した。米国起源のSWUシェアは27 % であり、海外起源のSWUが残りの73 % を占めた。海外起源のSWUでは、ロシア24 % 、ドイツ12 % 、英国11 % 、オランダ9 % となっている(表10、表11、図2)。

 表9 米国COOによるUフィードの引き渡し(濃縮国・納入年別)

 表10 米国COOが購入した国別のウラン濃縮役務の推移

 表11 米国COOへの濃縮役務業者(2020~2022年)   ©EIA

2022年に米国の民生用原子炉に装荷された燃料集合体中のウランは、2021年に装荷されたのと同じ量の4,440万ポンドU3O8だった。2022年中に装荷されたウランの3%は米国起源のウランであり、97 % は海外起源のウランだった(表12)。

 表12 米国の民生原子炉に装荷された燃料集合体中のU(年別)

<ウランの海外購入/販売およびインベントリー(在庫)>

米国の供給者(ブローカー、転換業者、濃縮業者、成型加工業者、生産者、商社)とCOOは、毎年海外の供給業者からウランを購入しており、2022年の海外からの購入は合計3,210万ポンドU3O8eだった(加重平均価格は40.31ドル/ポンドU3O8e)(表13)。米国の供給業者とCOOも海外の供給業者にウランを販売した。2022年の海外への販売は合計250万ポンドU3O8eであった(加重平均価格は54.65ドル/ポンドU3O8e)(表14)。

 表13 米国の供給業者およびCOOによる海外からのU購入

 表14 米国の供給業者およびCOOによる海外へのウラン販売

年末時点の商業用ウランインベントリー(在庫)は、国内外の核燃料施設における核燃料サイクルの様々な段階(転換、濃縮、または成型加工の過程)にあるウランの所有権を表す。米国の商業インベントリー(COO, 米国のブローカー、転換業者、濃縮業者、成型加工業者、生産者、商社が保有するインベントリーを含む)の合計は、2022年末に1億4,000万ポンド U3O8eで、2021年末の1億4,170万ポンドから 1 % 減少した。COOが2022年末に保有する商業用ウランインベントリーは合計1億380万ポンドU3O8eで、2021年末の水準から4 % 減少した。米国の供給業者(転換業者、濃縮業者、成型加工業者、生産者、ブローカー、商社)が保有するウランインベントリーは、2022年末に合計3,620万ポンドU3O8eであり、2021年末の水準から 9 % 増加した(表15)。

 表15 各年末におけるウラン原料別のインベントリー

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