EUにおける原子力の役割の評価への働きかけ -ポストコロナの経済復興および持続可能な投資に関するEUタクソノミー
欧州委員会(EC)は、2020年5月27日、コロナウイルスパンデミックからの経済復興に関する2つの計画案を発表した((ECウェブサイト「Recovery plan for Europe」))。「Next Generation EU」は2021年から2024年までの金融市場での新たな資金調達によりEUの予算を押し上げ、「A reinforced long-term budget of the EU」は2021年から2027年までのEUの長期予算を強化することを目指している。
しかしながら、ECは、2050年までに気候中立(CO2排出量が実質ゼロ)を達成するための欧州グリーンディールに関する一連の政策((ECウェブサイト「A European Green Deal 」)) (持続可能投資のEUタクソノミーを含む)に原子力発電を含めていないことから、今回の計画にも原子力発電が含まれていない。これに対し、FORATOM(欧州原子力産業協会)は、経済復興計画に原子力発電が含まれていないことに遺憾の意を表するとともに((FORATOMプレスリリース(2020年5月7日)))、6月3日、欧州の13の原子力産業団体25の原子力関係企業とともに、ECの幹部に宛て公開書簡を発出した((EURACTIV「European Nuclear Industry Open Letter: EU nuclear industry is ready to play an important part in supporting national and EU clean economic revival」))。
公開書簡では、経済面や健康面で未曾有の危機に直面した欧州その他の国々にとって、新型コロナウイルスのパンデミックに対応することは喫緊の優先事項であり、原子力発電を中心とする欧州のエネルギー部門は信頼性の高い電力供給の維持で今後も重要な役割を担い続けると指摘。欧州各国とEUがパンデミック後の経済復興を果たせるよう、欧州の原子力産業界は主導的な役割を果たす用意があると強調している((原子力産業新聞「欧州の原子力関係企業ら、EC宛て公開書簡で原子力が経済復興に果たす役割強調」(2020年6月4日)))。
また、2020年4月24日、「欧州持続可能な原子力技術プラットホーム(SNETP)」は、欧州委員会(EC)の欧州グリーンディール担当副委員長、経済担当副委員長、およびエネルギー担当委員に、持続可能投資のEUタクソノミーにおける原子力の適時かつ公正な評価を求め、100を超える学会や環境団体等が名を連ねる書簡を提出した((SNETPウェブサイト(2020年4月24日)))。
書簡では、2020年3月9日、持続可能な投資に関して助言する技術専門家グループ(TEG)が、EUタクソノミーに関する最終報告書を発表したが((ECウェブサイト「TEG final report on the EU taxonomy」))、原子力が持続可能な電源として定義されなかったため、政治的またはイデオロギー的意図によって影響されない科学的根拠に基づいた評価を求めている。
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