高速炉実証炉の概念設計に向けて

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗

7月12日、経済産業省の高速炉開発会議戦略ワーキンググループにおいて2024年度以降の「概念設計の対象となる炉概念の仕様」と中核企業が選定された。2022年12月に改訂された高速炉開発の「戦略ロードマップ」に沿った着実な進展として歓迎したい。

高速炉は資源の有効活用や高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減が可能であり、核燃料サイクルにおいて重要な役割を担う炉型である。総合資源エネルギー調査会原子力小委員会の下に設置された「革新炉ワーキンググループ」が2022年11月に取りまとめた「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ(骨子案)」においても高速炉は、優れた安全性を備え、放射性廃棄物の減容と有害度低減、エネルギー及び技術の自給、放射性同位体製造(医療への貢献)、電力系統全体の柔軟な運用、核拡散抵抗性の向上に貢献し得る技術と評価された。開発に当たっては長期的な視点に立ち、国の主導の下、一貫性を持って進めて頂きたい。

今回選定された炉概念については中核企業を中心に実証炉の概念設計・研究開発が行われることとなっている。開発に当たっては、わが国が持つノウハウを結集し優れた技術があれば取り入れるなど、より良いものを適時に作り上げ、社会実装につなげることが重要である。

本プロジェクトの推進は、今後の高速炉開発に伴う関係産業全体の実力涵養とともに、若者の原子力技術への興味を高め、人材育成にも寄与するものとして、大いに期待したい。

以上

<参考>

高速炉実証炉の概念設計対象となる炉概念仕様と中核企業の評価結果(報告)(2023年7月12日 高速炉技術評価委員会)

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/kosokuro_kaihatsu/kosokuro_kaihatsu_wg/pdf/021_01_00.pdf

改訂版「戦略ロードマップ」(2022年12月23日 原子力関係閣僚会議)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/pdf/r41223_siryou.pdf

「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ(骨子案)」(2022年11月8日 第33回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 参考資料)

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/033_s02_00.pdf

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